自閉症の子どもは独特の色彩感覚を持っており、黄色が苦手で緑色を好む傾向があることが、京都大学霊長類研究所の正高信男教授と、フランス・レンヌ第一大学のマリン・グランドジョージ講師の合同研究で明らかになった。
論文は心理学専門誌「Frontier in Psychology」(電子版)の2016年12月23日号に発表された。自閉症などの発達障害を持つ子どもの生活環境を整えるうえで、色彩の面も配慮する必要があることを示す研究結果だという。
子どもたちはみな青色と赤色が好きだが
京都大学の12月23日付発表資料によると、自閉症は対人関係が苦手なことや、興味関心が限られるといった症状が現れる。その一因に、障害にともなう「知覚過敏」があると考えられる。例えば、ごく普通の大きさの音でも、それを「大きすぎる」と知覚判断し「うるさい」と感じたり、ごく普通の皮膚接触でさえ「痛み」を覚えたりする。その結果、周囲の人々がごく普通に話しかけたつもりなのに、自閉症の子どもは怒られていると誤解したり、怖がったりしてパニックに陥ることも珍しくない。
そこで研究チームは、同様のことが色の知覚にもあるのではないかと考え、フランス西部レンヌ市に住む4歳~17歳の男子自閉症児29人を対象に、色彩の好みを調べた。比較のために同年齢の38人の定型発達男子(特に障害の認められない子ども:比較対照群)にも実験に参加してもらった。
実験に参加した計67人には色覚障害はなかった。実験に用いた色見本は、赤、青、黄、緑、茶、ピンクの6色で、それぞれの色の「好感度」(好みの程度)を4段階で尋ねて数値化した。それらの評価を2つのグループで比較すると、次のことがわかった。
(1)どちらのグループでも赤色と青色が一番好まれる点は共通していた。
(2)しかし、黄色は比較対照群では好感度が高く、赤色と青色に匹敵するほど高評価だったが、自閉症の子どもには好まれず、6色の中では上から4番目だった。これは黄色があらゆる色の中で、最も輝度(明るさの程度)が大きく、生理的に刺激が強い色彩であることと関係していると考えられる。
(3)反対に、比較対照群ではあまり好まれない緑色(上から4番目)の好感度が自閉症の子どもでは高くなった(上から3番目)。同様に、比較対照群では最も好まれない茶色の好感度も自閉症の子どもでは高かった(上から5番目)。自閉症の子どもに最も好まれないのはピンクだった。