世田谷は江東の4倍の空き家率
再び、マンションの建設ラッシュが起こりそうななか、2016年は「マンション空き家」問題がクローズアップされた1年でもある。
ニッセイ基礎研究所・金融研究部不動産市場調査室の竹内一雅室長が2016年10月27日に公表したレポート「図解 あなたの隣の家、実は空き家かも? ‐都市別・エリア別に空き家率を見える化してみた‐」によると、都区部で最もマンションの空き家率が低いのが江東区の3.3%。最も高いのが世田谷区の12.8%だった。
世田谷区といえば、成城や深沢といった高級住宅地のイメージがあるが、マンションの空き家率では、湾岸エリアのタワーマンションがそびえる江東区よりも約4倍もの差がある。世田谷区の空き家率が高いのはなぜか――。2016年12月27日、J‐CASTニュースの取材に、竹内氏はこう説明した。
「通勤への利便性が高い世田谷区には早くからマンション(賃貸を含む)が建ちはじめました。それに伴い、人口も増えてきました。ここ数年、建設ラッシュが続いているのは山手線内の都心部です。じつは(世田谷区は)バス便の利用が多いエリアであること、また中古マンションが多いことがあります。それらが影響しているのかもしれません」
また、世田谷区に次いで空き家率が高いのは、港区。千代田区や中央区、新宿区、文京区などが続く。「職住近接」と利便性もよく、ハイソサエティーなイメージがある都心部でも空き家率は高いようだ。
竹内氏は、「都心部が高いのは、供給戸数がどんどん増えているためとみられます。じつは、都区部の持家マンションの空き家率の高さは、必ずしも人口増加率とは関係がありません」と説明する。
一方、目黒区や豊島区、練馬区、葛飾区などは、マンション空き家率が低いほう。「人口増加率の低い区の中には、住宅建設が活発に進まないため、空き家率がさほど上がらない区があるようです」という。
とはいえ、空き家の増加は、その地域の住宅地の不動産評価に悪影響を及ぼし、ひいては個人の住宅の資産価値にも影響する。
竹内氏は、「調査の数字はあくまで2013年のもの。都心の空き家率は需給関係によっても大きく変わってきますが、団塊世代が75歳以上を迎える2025年問題のときにはさらに多くの空き家が出てくることは必至です」と話している。