ノロウイルス流行の影響で全国各地の餅つき大会が次々と中止に追い込まれている。近隣への配慮から「除夜の鐘」を自粛する動きも見られるほか、2017年1月2日には年賀状の配達は行われないという。年末年始の伝統に微妙な変化が表れつつある。
ノロウイルスは感染性胃腸炎の主な原因になるとされるが、2016年の流行状況は特に厳しいという。国立感染症研究所の12月27日の発表によれば、1医療機関当たりの患者数は10年ぶりの高い水準。そんな中、12月に入ると集団食中毒を心配して餅つきを中止する動きが広がった。
昼から除夜の鐘
千葉県木更津市の市郷土博物館「金のすず」は、12月23日に予定していた毎年恒例の餅つきを取りやめた。例年150人程度が集まる盛況な催しだが、食中毒の懸念をもった博物館側が地域の保健所に相談したところ、「できればやめてほしい」と助言された。このため「市民の安心安全のためにはやむを得ない」と判断し、中止を決めたという。
餅つきは手返しや切り分けに加え、その場で「あんこ餅」や「きなこ餅」を作って参加者にふるまうなど、直接手で触れる工程が多く、感染につながりやすいと言われる。こうした状況から、中止に「仕方ない」との声はあるものの、「他の外食にも同じようなリスクはある。徹底した衛生管理をすればいいのであって、伝統行事を中止すべきではない」との批判は多い。
黄信号がともっているのは、餅つきだけではない。最近では、寺の周辺に住宅地が広がる地域も多く、近隣住民が「除夜の鐘」に対し、「うるさい」と苦情を訴えるケースも出ている。静岡県内のある寺院では、住民からのクレームを受け、大みそかの深夜から打つ「除夜の鐘」をやめ、昼過ぎの明るい時間に鐘を打つ方法に切り替えた。「風情がなくなる」との批判もあるが、子供やお年寄りをはじめ、多くの人が鐘突きに寺を訪れるようになるなど、逆に良い効果も出ているという。
年賀状にも変化の波
一方、年明けの楽しみの一つである年賀状にも変化の波が。日本郵政は「電子メールの普及などで年賀状を出す人が減っている」などとして、1月2日の配達をやめるという。年賀状の発行枚数は2015年度で約32億万枚と、過去最高だった2003年度(約44億6000万枚)から3割も減っている。人手不足が強まる中、アルバイトを確保できないことも要因の一つという。
また、2016年の暮れにかけては、北海道で鮭の水揚げが例年の6割にとどまるとされ、鮭やイクラの価格が高騰しているという。おせち料理にも厳しい現実だ。
さまざまな理由から、年末年始の風物詩が逆風にさらされつつある。日本の風情はどう変わるのか、考えさせられる年末年始だ。