衣料品チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの株価が、2016年半ばから年末にかけて上昇基調をたどった。大納会の12月30日の終値は4万1830円で、年初の取引初日の終値(3万8140円)を上回った。販売不振などから7月に年初来安値となる2万5305円まで下げたが、気温低下による冬物衣料の好調さなどから株価が持ち直し、12月21日には年初来高値の4万4370円をつけた。ユニクロ販売の変調で2015年後半から続いた下げ局面はひとまず底を打ったのか。
冬物の売れ行きを占う2016年11月のユニクロの国内既存店売上高は、前年同月比7.3%増と大きく伸びた。前年超えは4か月ぶり。前年より気温が低く推移したところに基幹商品の機能性肌着「ヒートテック」などの値下げ効果が表れた。ヒートテックの主要シリーズは2015年に1290円(税別、以下同)だったものが990円に、2015年に6990円だったウルトラライトダウンジャケットは5990円にそれぞれ値下げしている。例年11月に4日間実施している「感謝祭」を、3日多い7日間の開催としたことも集客増につながった。
16年春夏から値下げに素早く転換
もっとも、2015年までは円安の影響で原材料費が上昇したことなどから、2年連続で値上げに踏み切り、結果的に客離れを招いていたから、その反動もある。また、比較対象の2015年11月は2016年11月に比べかなり暖冬だったことも収益に響いた。
ただ、2015年までの値上げが収益に逆効果と見るや、2016年春夏から値下げに素早く転換し、消費者の低価格志向を再びつかんで客足を戻しているのは確かだ。柳井正・会長兼社長率いるオーナー企業らしい価格政策の決断の速さ、柔軟さがV字回復に一役買ったと言える。2016年前半の円高傾向や原油安も原材料費を抑制し、利益には追い風となった。
ファーストリテイリングが10月に発表した2016年8月期連結決算は、純利益が前期比56%減の480億円となる大幅な減益決算だった。ただ、前半、後半に分けてみると、営業利益ベースでは前半が前年同期比34%減だったのに対し、後半は94%増と反転しており、業績にも値下げの成果がはっきり出ている格好だ。