高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉が2016年12月21日、政府の原子力関係閣僚会議で正式に決まった。施設の安全基準を満たすには多額の費用がかかるなど再稼働は難しいとの判断だ。使った以上の燃料を生み、資源に乏しい日本にとって「夢の原子炉」と期待されたもんじゅだが、1兆円超を投じながら、相次ぐ事故や不祥事のため22年間で250日しか運転できないまま歴史の幕を閉じる。ただし、政府は使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策は維持し、高速炉開発を続ける方針も決定した。
原子力規制委員会は2015年11月、半年をめどに、もんじゅの新たな運営主体を示すよう勧告。これをきっかけに、政府内でもんじゅの在り方の見直しが進められていた。今回は、規制委への最終回答といえる。
もんじゅに代わる「高速実証炉」の開発方針
もんじゅは、ウランとプルトニウムを燃料に、消費した以上のプルトニウムを生む。出力28万キロワットで、1994年に初臨界に達したが、1995年12月にナトリウム漏れ事故を起こして運転停止になり、その後も燃料運搬装置の落下事故が起き、機器の点検漏れが大量に発覚するなど不祥事が続きで、ほとんど稼働しないまま、いまでも年間維持費が200億円かかる。廃炉には30年を要し、費用は同規模の原発の10倍の3750億円に達する。
ほとんど動かない、こんな「金食い虫」が、なぜ生きながらえてきたのか。それは、資源に恵まれない日本として、原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して再び核燃料に使う核燃料サイクルを国策と位置付けており、もんじゅが、その中心に位置するからだ。
核兵器の原料にもなるプルトニウムを日本は48トン(核兵器数千発分)保有しているが、もんじゅなどで平和利用することを前提に、特別に認められているもので、核燃サイクルの旗を簡単に降ろせないという事情も指摘される。
政府は、もんじゅに代わる「高速実証炉」の開発方針も決め、海外との協力や、もんじゅなどの国内施設を活用し、今後10年程度で基本的設計を固める。具体的にはフランスが計画する新型高速炉「ASTRID(アストリッド)」の共同研究を軸に検討する方向とされる。