大みそかには「年越しそば」を食べるのが日本の伝統......のはずが、そばの代わりにラーメンをすする食習慣が出始めている。
日本ラーメン協会ではここ数年、「年越しラーメン」を普及させようと活動している。「そば」と言えば「中華そば」、つまりラーメンを指す地域もあり、そこでは12月31日もラーメンを食べるのが普通だという。
横浜ラーメン博物館では18年前にスタート
ラーメンの振興のため調査や企画運営を行う日本ラーメン協会(東京都中央区)事務局担当者は、2016年12月28日のJ-CASTヘルスケアの取材に対し、年越しにラーメンを食べる風習を定着させようと、「年の瀬ラーメン」と銘打って2011年以降年末に協会加盟店に呼びかけてピーアールを強化している、と答えた。
同協会公式サイトの「年の瀬ラーメン」の説明によると、「ちょっぴりぜい沢な気持ちになる」「体調を崩しやすい時期なので体に優しい」「年の瀬を明るく過ごす縁起を担ぐ」の3点を特徴とする。
日本各地のラーメンの名店が集まるフードテーマパーク「新横浜ラーメン博物館」(ラー博、横浜市港北区)では、館内に出店している一部店舗が年越しラーメンを提供している。取材に答えたラー博の営業戦略事業部担当者によると、「当館では1998年に年越しラーメンを提供する店が出始めました」。ラー博全体でも、大みそかの売り上げは他の日より微増するといい、
「年越しにラーメンを食べる人が徐々に増えているのかもしれません。そばアレルギーのお客様が代わりにラーメンを食べる場合もあるようです」
と話す。
ただ、ラー博で16年末に年越しラーメンを提供するのは2店舗だけ。「もっと増えれば当館全体としての企画を打つ可能性もありますが、現状は各店の自主的な提供に委ねています」とした。
そばといえば中華そばを指す
「年越しラーメン」が定着していると言えそうなのが、岐阜県高山市だ。市文化財課担当者は取材に対し、
「終戦直後のころ、高山で屋台を引きながら中華そばを売って回った人がおり、食料不足の時代ということもあって飛騨高山地域で広まったと聞いたことがあります。現在でも、年越しに中華そばを食べる人は多いと思います」
と答えた。また、地元のスーパーマーケット「ファミリーストアさとう」のウェブサイトを見ると、年末に「飛騨の年越しらーめんセット」を販売している。
高山市内にあるラーメン店店員は取材に対し、「高山では普通『そば』と言えば『中華そば』を指します。年越しも中華そばを食べるので、大みそかの市内のラーメン店はどこも混み合うと思いますよ」。市民にとって身近だから年越しに中華そばを食べるとし、「意味や縁起は、全国の『年越しそば』と同じだと思います」と話していた。
「年越しそば」を食べるようになった由来は諸説あるが、日本麺類業団体連合会が運営するウェブサイト「麺類雑学辞典」によると、(1)そばは細く長く伸びるため、健康と長寿命を願う、(2)そばは切れやすいため、一年の苦労・厄災を断ち切って新年を迎える、(3)金箔を扱う細工師は飛び散った金粉を集めるのに練ったそば粉を使うことから、そばは金運を高める縁起がある――といった説が有力だ。江戸時代に普及したという。次は21世紀の世から、年越しラーメンの習慣が広がるだろうか。