安倍晋三首相は2016年12月28日朝(日本時間)、米国のオバマ大統領とともに75年前の日米開戦の地となったハワイの真珠湾を訪れた。アリゾナ記念館訪問後の演説で、安倍首相は日米同盟を「希望の同盟」と表現し、日米は「和解の力」で結びついたと表現。真珠湾を「和解の象徴」だとした。
日本政府が「謝罪はしない」と繰り返し表明していたように、演説に「謝罪(apology)」の表現は盛り込まれなかった。これに加えて、2015年の「戦後70年談話」には盛り込まれていた「反省」という文言も盛り込まれなかったこともあり、早くも「歴史修正主義」批判が一部でくすぶっている。とりわけ、日米同盟強化を警戒する中国メディアからは、アジア太平洋に「乱気流」が起きるとも非難している。
LAタイムズ「アリゾナ号沈没の恐怖を詳細に説明」
安倍首相の演説をめぐっては、米メディアでは「謝罪すべき」との声もあるものの、一定の評価を与えるメディアもある。例えばロサンゼルス・タイムズは、
「安倍首相は正式な謝罪はしなかったが、アリゾナ号沈没の恐怖を詳細に説明した」
として、首相演説について、
「1人、ひとりの兵士に、その身を案じる母がいて、父がいた。愛する妻や恋人がいた。成長を楽しみにしている子どもたちがいたでしょう」
「戦争の犠牲となった数知れぬ無辜(むこ)の民の魂に、永劫(えいごう)の哀悼の誠をささげます」
などと引用しながら伝えた。一方、米国に比べて近隣諸国の論調は、やはり日本に対して批判的だ。
韓国の中央日報は、12月28日の社説で、ハワイ訪問について
「日米同盟の土台を揺さぶろうとしているドナルド・トランプ次期大統領を意識した行動であることは明らか」
だとして、安倍首相がトランプ氏といち早く会談したことを含めて、
「このような安倍氏の機敏性を韓国の政治家も見習うべき」
などと一定の評価をしたものの、演説内容については
「韓国や中国など日本の侵略で途方もない被害を受けたアジア諸国に対する礼儀ではない。米国だけに和解のジェスチャーを送れば目の前の国益だけを追う姑息な行為だとする非難を免れがたい」
と不満を表明した。