世界的な現代美術家の村上隆さん(54)が監督を務める注目のアニメ作品『6HP/シックスハートプリンセス』が2016年12月30日、プロジェクト立ち上げから6年の期間を経て、ついに放送される。
だが、村上さんのフェイスブックによれば、放送直前になっても「(作品は)全く出来ていません」。アニメは「未完成状態」で放送されるうえ、1時間の番組の半分以上を、村上さん自らが「謝罪」や「言い訳」を行うドキュメンタリー映像が占めるという異例の内容になる見込みだ。
「今日もまだ納品にまで達していません」
美少女アニメなど日本のオタク文化を題材にしたアート作品で知られる村上さん。2010年にはフランス・ヴェルサイユ宮殿で展覧会を開いたり、16年に文化庁の芸術選奨を受賞するなど、華々しい経歴を持つ現代美術家だ。
そんな村上さんが「夢」だと公言しているのが、自身のアート作品のルーツにもなったアニメ制作。その記念すべき第一作としてTOKYO MXで放送されるのが、今回の『6HP』だ。
世界的美術家が手がけるアニメだけあり、幅広い層から大きな注目が寄せられている『6HP』。だが、総監督を務める村上さんが放送4日前の26日に更新したフェイスブックによれば、
「今日もまだ納品にまで達していません」
というのだ。
いったい、何が起きているのか。実は、村上さんはこれまでにも、アニメの制作が「間に合わない」という危機的な状況をSNSで赤裸々に明かしていた。12月19日には、
「(『6HP』は)全く出来ていません」
と暴露。その上で、未完成のカットが多数あるとして、「納品のその瞬間まで、皆で頑張って、ギリギリまでやりますが、それでも間に合いません」とも打ち明けた。
この投稿では、作品が未完成のままでも「線画、背景レイアウト状態で、放映します」と宣言。ただ、1時間の放送枠のうちアニメの放送時間は1話分の22分だけ。残りの30分以上は、村上さん自身が出演する「謝罪&言い訳ドキュメンタリー」映像になるとも明かした。
MX側「(作品は)予定通り放送します」
村上さんは23日にも、原画や背景などの素材が「(今も)撮影スタジオに次々に納品され続けていて、アニメーションの体になっていっています」と新たな状況を説明。「ギリギリいっぱいまで、努力出来る限りの事はやります」としたが、
「キャリアを積んだ方々の作品の体には絶対になりそうもありません。。。参加してくれているスタッフの皆さん、もうしわけありません。(略)こんな惨状になってしまうとは」
と苦しい胸中も明かしていた。
その後、村上さんは放送3日前の27日朝に「納品、先程MXに致しました」と報告。「不本意な部分だらけですが、スタッフ達と過ごした7年間が走馬灯の様に流れて、一話の最後をみて、感無量になったりしました」としていた。
アニメを放送するTOKYO MX編成部はJ-CASTニュースの取材に対し、こうした村上さんの投稿について「把握している」と回答。その上で、「(アニメは)予定通り放送します」としていた。
制作が遅れた理由は・・・
とはいえ、『6HP』のプロジェクトがスタートしたのは2010年のこと。いったいなぜ、ここまで制作スケジュールが遅れてしまったのか。その理由について、村上さんは16年10月発売の雑誌『美術手帳』(11月号)の中で、
「(過去に一度)22分のCGアニメーションを制作してみたものの、何かが違う!気に入らない!と、完成したにも拘らず、発表もせずに仕切り直し。その後も、紆余曲折、いろいろほんとうにいろいろあって、今に至っています」
と説明しており、同じ文章を12月19日のフェイスブックにも投稿していた。
こうした村上さんの「こだわり」を受け、フェイスブックなどのコメント欄には「楽しみにしています」「まずは見ます、全てはそこから」といった激励のメッセージが数多く寄せられている。
だが、現場のアニメ監督からは手厳しい意見も。『おじゃる丸』や『トイレの花子さん』などの作品で知られる、ベテラン監督の大地丙太郎さん(だいち・あきたろう=60)は26日のツイッターで、村上さんの作品が未完成状態で放送されることを取り上げたニュースを引用しながら、
「ふざけんな! 誰も見るな! 録画もせんでええ! 出来てからやれ!」
と強く批判していた。