お腹を押さえて駅のトイレに駆け込んだら、トイレットペーパーが無かった――。同じ経験をした人は少なくないだろう。目の前には「ちり紙」の自販機。一刻の猶予もないので、慌ててポケットから財布を取り出し、購入した。
今、そうした光景が鉄道の駅から消えつつある。というのも、鉄道会社が駅からちり紙自販機を減らし、メーカー側も駅に設置するちり紙自販機やちり紙の製造をやめてしまったためだ。
あるツイッターユーザーは16年12月、ちり紙自販機に掲示された「販売休止」を知らせる告知文の写真を投稿した。写真で見る限り、告知文には「『ちり紙』製作会社の廃業により、在庫の確保が困難になった」とある。これに対し、
「もう紙は手に入らないのか」
「ちり紙会社って今厳しいのか...」
と驚きの声が相次いだ。このツイートは、まとめ記事も作られるなどして、今なお拡散を続けている。
「廃業」の真偽は定かでないが、その数が減っていることは間違いない。ちり紙や自動販売機を製造するダイト(東京都文京区)の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、「10年以上前から、駅のトイレの自販機は少なくなっています。うちではもう作っていません」と明かす。
同社は現在、ちり紙やその自販機を主に、病院など医療関係施設、デパート、スーパー、アミューズメント施設に卸しているという。
鉄道会社側も、ちり紙自販機を駅からどんどん撤去している。東武鉄道の広報部によると、10年前の12月に133台あった沿線駅内の自販機は、現在35台まで減ったという。
これまで、関西では駅にちり紙の自販機を置く鉄道会社が多く、関東ではトイレットペーパーを備え付ける鉄道会社が多いと言われていた。
しかし、その関西でもちり紙自販機は減らされているようだ。近畿日本鉄道の広報部は取材に対し、「今も設置されている駅はあるかもしれないが、もうトイレットペーパーがほとんどの駅に付いている状況」と話す。
先述のまとめ記事に対し、ツイッターユーザーの多くは
「チリ紙なんて買ったことない」
「最近見ない」
と共感している。駅でちり紙を買う習慣自体、もはや「絶滅危惧種」のようだ。