鳥インフル、動物園の全殺処分はないのか 「徹底防疫」養鶏場との差

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   鳥インフルエンザウイルスが日本国内のみならず隣の韓国や中国、さらには欧州など全世界で猛威を振るっている。

   日本では2010年から11年にかけて大発生した野鳥の被害件数の62件(糞便なども含めて)を超えて、2016年12月26日現在101件(同)にのぼる。これから本格的な渡り鳥シーズンを迎えて、深刻な事態が続く。

  • 動物園での防疫対策の意思決定は難しい(画像はイメージ)
    動物園での防疫対策の意思決定は難しい(画像はイメージ)
  • 動物園での防疫対策の意思決定は難しい(画像はイメージ)

韓国は過去最悪、2500万羽処分

   とくに心配なのは養鶏場の被害だ。渡り鳥が飛来し始めた直後の11月末に青森市で食用に飼育していたアヒル農場で感染が確認されたのを皮切りに、新潟県関川村や上越市、さらに北海道清水町、宮崎県川南町の養鶏場に広がった。12月25日現在、4道県6農場に及んでいる。殺処分された鶏やアヒルは97万羽に達する。

   一方、韓国の日刊紙である中央日報によれば、韓国ではすでに2500万羽が殺処分され、過去最悪の事態を迎えているという。

   基本的にヒトからヒトへの感染は確認されていないH5N6型の鳥インフルエンザウイルスなのに、これほど大騒ぎするのはなぜか。さらには感染した家きんがいた農場の全ての鶏を殺処分するのは、いかにも残酷にみえる。だが、ここまで防疫対策を徹底するのにはふたつの意味がある。

   一義的には鳥インフルエンザの拡大を防ぎ、ウイルスを撲滅するためだ。

   だが、それだけではない。ヒトの間で流行するインフルエンザウイルスの起源は、この鳥インフルエンザウイルスであることはよく知られている。インフルエンザウイルスは伝播力が強く、変異ウイルスに変化しやすいうえに、鳥のウイルスの遺伝子がヒト感染しやすいウイルスに入れ替わる「遺伝子再集合」を起こすことがある。いわば「異端」のウイルスが生まれやすいということだ。世界保健機関(WHO)は、こういった変異によってヒトからヒトへと感染する新型インフルエンザウイルスの出現を最も警戒しているのだ。

   ここでカギを握るのがブタの存在だ。ブタは鳥インフルエンザウイルスにも、ヒトの間で流行するインフルエンザウイルスにも感染する。この両方のウイルスがブタの体内で交雑して遺伝子再集合を起こして新型インフルエンザウイルスが生まれる。そのことを突き止めたのは、北海道大学の人獣共通感染症リサーチセンター統括の喜田宏教授だ。1918年~19年にかけて全世界を巻き込み、4000万人といわれる死者を出したスペインかぜも、56年のアジアかぜも、68年の香港かぜ、そして2009年のパンデミック(世界的な流行)も、ブタの体内で遺伝子再集合を起こして生まれたと喜田教授は説明する。

   鳥インフルエンザウイルスに養鶏場の鶏が感染した場合、その密集した環境の中で感染が爆発してウイルスが大量に増える。鶏肉や卵が集荷されて運び出されるし、人の出入りもある。防疫を疎かにしてウイルスが蔓延すれば、ブタとの交雑する機会は増えることになる。だから、日本だけが蔓延を阻止しても効果は少ない。世界的な防疫対策を徹底しなければならないわけだ。

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