忘年会や新年会のシーズンが近づいたが、どうしてオトコは飲み会になると「バカ食い」をして騒ぐのだろうか。
その男性心理に深く分け入って検証すると、女性に対する見栄と同性の男たちへのライバル心から、本人にはその気がなくてもつい食べ過ぎてしまうことがわかった。心当たり、ありますか?
早食い競争で応援されて「本気になった」
この研究成果をまとめたのは米コーネル大学のブライアン・ウォースキー博士らのチームだ。栄養学の専門誌「Frontiers in Nutrition」(電子版)の2016年11月24日号に発表した。
日本でも早食い競争でご飯をのどに詰まらせ窒息死する事故があったが、米国でも早食い競争(Competitive eating)が盛んだ。論文によると、研究チームは2つの興味深い実験を行ない、ドカ食いする男性の「深層心理」に迫った。
実験1では、20人の男女学生グループをA、B、Cの3つ作った。公平を期すために平均体重が同じになるようにした。
そして、AとBグループには30分間でどれだけ多くの鶏の手羽先を食べられるかを競わせた。男女ともそれぞれ上位に、1.29ドル(約150円)相当の「金メダル」「銀メダル」が贈られた。そして、Aは周りに応援する人々を置かず、仲間同士だけで競わせた。Bは周りに応援する人々を置き、盛り上げさせた。Cは比較対照のためのグループで、30分間、自分のペースで手羽先を食べてもらった。
その結果、次のことがわかった。
(1)競争をしないCグループが最も食べる量が少なかった。
(2)応援する人々がいないAグループは、Cと比べると、男女とも4倍多い量の手羽先を食べた。
(3)応援する人々がいたBグループは、Aよりさらに3割多く手羽先を食べた。男子学生は「盛り上がって本気になった」「チャレンジだ」「爽快な気分だ」と語った。女子学生は食べる量がCより3.5倍多かったが、Aグループに比べると、逆に4割少なかった。女子学生は「恥ずかしくなった」と語った。
「男の見栄」はオトコ同士にしか通じない
実験1では、賞品は「安物」だし、応援する人々もわずか12人だった。それでも、男性は応援者で燃え上がり、女性は萎縮するという逆の結果が出た。研究チームのケビン・ニフン博士は、論文の中で「男性は競い合う場があると、仲間より男らしく力強いことを証明したがり、つい食べ過ぎてしまうのです。一方、女性にはそんな競争心はありません」と語っている。
次の実験2では、早食い競争に参加した男女学生の「魅力度」と、早食いの「成績」との関係を調べた。93人の学生(男性59人・女性34人)に「審判役」になってもらい、早食い競争に参加したA、Bの学生たちの「魅力度」を評価させた。魅力度は「知的」「セクシー」「健康的」「力強い」「ロマンチック」の5項目で、「まったくない」から「非常に多くある」まで6段階で評価した。
すると、ここでも次のようにはっきりと男女差が出た。
(1)A、Bグループともにずば抜けて多く食べた男子学生は、「力強くてセクシー」という高い評価を、男性審判員から受けた。
(2)しかし、女性審判員からは特に高い評価を受けなかった。女性審判員は早食いの成績に関係なく、男性学生の「魅力」を評価した。
(3)A、Bグループとも参加した女子学生は、早食いの成績に関係なく、「魅力」を評価された。その評価は男性・女性審判員に特に差はなかった。
女性が見ているホントの「男の魅力」
この結果について、ニフン博士は「モリモリ食べる行動について、男性と女性の間に完全なミスマッチがあります」と指摘する。男性は自分の「男らしさ」「力強さ」を女性にアピールする方法として旺盛な食欲を誇示したがる。それは仲間の男性には有効で、実際に男性審判員の多くは高い評価を与えた。ところが、女性審判員にはまったく通じなかった。女性たちは、食欲とは関係のない「魅力」で男性を評価していた。
ニフン博士は論文の最後でこうコメントしている。
「この研究で得た知見は、パーティーなどの社交の場で若い男性が食べ過ぎてしまう理由を明らかにすることで大きな意義があったと考えます。男性の過食は健康上、重大な問題ですから」
宴会で盛り上がるのはいいが、くれぐれも暴飲暴食はやめよう。ちっともモテていないのだから。