天皇陛下が2016年12月23日、83歳の誕生日を迎えた。これに先立つ20日には、8月に退位の意向を強くにじませた「お気持ち」で表明後、初となる記者会見が行われた。
退位をめぐっては、一代に限って退位を認める特別措置法制定と、皇室典範を改正して恒久的な制度として退位を認める方針の両面から、議論が進んでいる。両者を念頭に置いたのか、会見では「各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」と述べた。
有識者会議「皇室典範改正は困難」
誕生日の記者会見は、記者の代表質問に答える形式。この1年を振り返るなかで、天皇陛下は以下のように「お気持ち」に触れた。
「8月には、天皇としての自らの歩みを振り返り、この先の在り方、務めについて、ここ数年考えてきたことを内閣とも相談しながら表明しました。多くの人々が耳を傾け、各々の立場で親身に考えてくれていることに、深く感謝しています」
政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は、特措法を念頭に置く立場だ。12月23日の読売新聞朝刊は、有識者会議の御厨貴座長代理(東京大学名誉教授)へのインタビューを掲載。17年1月に公表する「論点整理」で、現在の天皇陛下に限って、退位を実現する特措法を制定する方針を打ち出すとした。
御厨氏は記事中で、皇室典範改正で退位を恒久制度化するのは困難としつつ、今後同じ事態が起きても、今回の特措法が「先例」となる見解を示している。
民進党、特措法なら「退位に違憲の疑い」
一方で、皇室典範改正を訴えるのは民進党だ。憲法2条に「国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とあることを根拠に、特措法での退位は、
「憲法の要請に反し、退位に違憲の疑いを生じさせるとの指摘もある」
としている。
民進党の皇位検討委員会は12月21日、「皇位継承等に関する論点整理」を発表。皇室典範第4条の2として、「天皇は、皇嗣が成年に達しているときは、その意思に基き、皇室会議の議により、退位することができる」との規定を新設する案を示した。
時事通信が12月9~12日に行った世論調査では、皇室典範改正を求める声が61.0%にのぼる一方で、特措法制定への賛同は21.6%にとどまった。政府は、次の通常国会で法整備を目指すが、与野党の調整がスムーズに進むかは不透明だ。