京都大学の学生総合支援センターが公開した「留年や退学」についての文章が反響を呼んでいる。一般的にネガティブな印象を持たれがちな留年・退学だが、京大は、「大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできているもの」という前提で進路選択に悩む学生に向けてポジティブで具体的なアドバイスを示した。
公開以来、ネットなどで「感動した」、「優しい記事」、「公式文書ではなかなか書けない」といった反応が相次いでいる。J-CATSTニュースはメッセージを執筆した同大学教授で、臨床心理学者でもある杉原保史氏に公開の意図を聞いた。
「単に個人の失敗としてのみ捉えられるべきものではない」
京大では大学全体で約2割の学生が留年しているという。学生総合支援センターは2015年11月30日にホームページ上で「留年について」というタイトルのメッセージを公開し、
「留年や退学は、単に個人の失敗としてのみ捉えられるべきものではない」
「現在の日本の社会において大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできている」
との見解を示した上で、留年をきっかけに陥りやすい悪循環から脱出するための工夫や、「中退=破滅ではない」という認識を持つことなど、具体的なカウンセリングアドバイスを示した。内容はソフトタッチで分かりやすく、
「たとえ不完全でも、たとえ中途半端でも、たとえみっともなくても、とにかく今、行動することが大事です」
「絶対に失敗のない完璧な決断などありえません。迷って当たり前、たじろいで当たり前です。必要ならば一緒に考えていきましょう」
といった前向きな表現が随所に盛り込まれている。
これが2016年10月ごろからブログやフェイスブック、ツイッターなどで取り上げられるようになると、京大を越えた反響が広がり、
「温かい文章」
「いい考え。というかもっと当たり前になって欲しい考え」
「なかなかこんなこと公式文書で書けない。やってくれますねぇ」
といった好意的なコメントが相次いだ。