高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
 マイナンバーの次にくる 富裕層の脱・節税対策

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高額紙幣の廃止

   一方、法人番号(「企業版マイナンバー」)が、国税庁が付番する13桁の数字で、すべての法人に付与される。この企業版マイナンバーでは、扱いに規制はなく民間で自由に利用していい。国税のウェブサイトで、商号、本店所在地、法人番号等が公開される予定である。

   マイナンバーは徐々に社会に浸透している。そうなってくると、不安になってくるのが、所得を把握されたくない富裕層である。いずれは、マイナンバーが金融機関の口座開設にも利用される。そうなると、架空預金口座を持つのはかなり難しくなる。さらに、各種税務書類にマイナンバーが使われるようになり、金融機関口座とマイナンバーとリンクされるようになると、税務当局は脱税を見つけ易くなる。

   財務当局が、課税申告を怪しいと思ったら、その人の資金フローを徹底的に調べる。しかし、現状では、金融機関の預金口座を完璧に調べることはできない。複数の預金口座をもち、架空口座を使えば、口座名寄せもできないからだ。

   マイナンバーが浸透する時代に脱税・節税をしようとするなら、国内の現金取引か海外取引を使わざるを得なくなるだろう。実際、マイナンバー導入によって、タンス預金のための現金需要が多くなっているという話も聞こえてくる。

   次に来るのが、電子決済への切り替えなどのよる現金レス社会への流れだ。主要国における現金紙幣の対GDP比は、3~8%程度であるのに対して、インドは12%程度になっている。なお、日本は20%と主要国の中ではダントツに高い。

   そこで考えられるのが、電子決済への切り替えなどとともに、高額紙幣の廃止である。日本と同じような現金社会であったインドでは高額紙幣が廃止された。ユーロやベネズエラでも高額紙幣が廃止され、カナダやシンガポールも段階的に高額紙幣の流通を減らし、現金レス社会への移行が世界の大きな潮流である。

   日本でも高額紙幣を徐々に少なくするような方向だろう。でも、この流れは、脱税・不正蓄財とは無関係な庶民には関係ない。むしろ課税の公平が確保されるので望ましいことである。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。


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