覚醒剤を使用した疑いで逮捕された歌手のASKAさんが嫌疑不十分で不起訴となり、釈放された。まだ、警察の不手際も指摘されるなど、なお謎も多い事件だが、ASKAさんが一貫して無実を主張していたこともあり、インターネット上では、これまでのマスコミのASKAさんに対する報道姿勢に改めて批判が相次いでいる。
タクシー映像問題、エンブレム事件、未公開音源無断放送――。2016年11月28日の逮捕当日から12月19日の釈放まで、「メディアの暴走」と言えそうな出来事はいくつも起きていた。
音喜多都議「マスコミはどう責任を取るのだろう」
「すでに散々、犯人扱いして報道したマスコミはどう責任を取るのだろう。警察から情報がリークされているであろうことも含め、『疑わしきは罰せず』や個人情報の保護が機能してない現実に危機感を覚えます」
こうツイートしたのは、音喜多駿・都議会議員。不起訴の報を受け、報道のあり方に疑問を投げかけた。
お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さんも、ツイッターで
「証拠もないのにひとりの人間に対して、マンモスを捕まえた時の原始人のようなお祭り騒ぎだったネットのあほ、マスコミ、警察。あすかさん、不起訴だったらしいですよ」
と皮肉を込めて非難した。
ASKAさんの逮捕をめぐっては、自宅に帰る際のタクシー内映像がテレビ各局に使われた件が物議を醸した。その後、映像を提供したタクシー会社は謝罪したが、各局はこれを「スルー」してきた経緯がある。逮捕当日には、自宅前に押し掛けた報道陣がASKAさんのベンツのエンブレムを折ってしまうという「アクシデント」も発生していた。
加えてネット上では、ワイドショー出演者の行き過ぎた言動も問題視されてきた。1つは「Mr.サンデー」(フジテレビ系)の司会者、宮根誠司さんの発言だ。
ASKA父に「息子さんは残念ながら...」
12月4日放送の同番組では、福岡にいるASKAさんの父親を直撃取材した様子を放送。父親はASKAさんが飲んでいる風邪薬や栄養ドリンクに覚醒剤と間違える成分が入っていたのではないかと考え、番組に分析を依頼していた。宮根さんは、専門家の否定的な見解を受けて、父親にこう言ったのだ。
「お父さんが息子さんを信じたいという気持ちは分かりますけど、この中(風邪薬)の中からは出ませんから。息子さんは残念ながら覚醒剤を使用してらっしゃるということになると思いますよ」
芸能リポーター・井上公造さんもバッシングを受けた1人だ。逮捕当日に「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)に生出演していた井上さんは、ASKAさんが自身に送ってきたという未公開音源を無断で流してしまったのだ。
番組終了後、ASKAさん本人から電話口で「曲流しちゃだめだって」と指摘されたが、井上さんは「あれは逆に聞かせたほうがいいかなと思ったんですよ」と受け流した。
そのため20日の「ミヤネ屋」では宮根さんや井上さんの発言に注目が集まったが、宮根さんの冒頭の一言は「一体あの逮捕劇は何だったのでしょうか」。その後、尿検査の話を詳報するも、ASKAさんや父に向けた明確な謝罪と受け取れる言葉はなかった。井上さんは出演そのものがなかった。
これを受け、ネット上では「はやく謝罪しなさいよ」「まず報道姿勢を反省しろ」「一言あってもいいよね」などと、ブーイングが飛んでいる。
一方で株を上げたのが日本テレビ系「スッキリ!!」のMC、加藤浩次さんだ。20日の放送では「僕自身、起訴の方向になると思った部分あったんですよね。ぼくも(起訴されると)思って発言したこともある」として、ASKAさんの逮捕後の自身のコメントを振り返り、「その部分に関しては、ぼくもしっかり考えなくちゃいけない」と真剣な表情で述べていた。