「時間がたつと、かげのむきがかわるのはなぜですか」――。こう問われた際、皆さんなら、どんな答えを用意するだろうか。
「もちろん、地球が回っているから」と答える人は多いだろう。コペルニクスの時代からおよそ500年を経て、地動説はもはや常識になっている。しかし、もしあなたが日本人の小学3年生なら、先生に「誤り」を指摘される可能性がある。そんな「理不尽」とも言えそうなエピソードが、あるツイッターユーザーに報告された。
教育関係者も「私なら正解にしている」
「僕は間違っていると思う」と強い調子で訴えるのは、ある男性ツイッターユーザーだ。男性は2016年12月18日、小学3年生になる息子の答案用紙を写真で投稿した。理科のテストなのだろう。かげの向きが時間の経過で変わる理由を、地球と太陽の関係から導き出す設問だ。
「時間がたつと、かげのむきがかわるのはなぜですか」
これに対し、小学生の息子は「地球が回るから」と回答。しかし、採点で「×」となり、「太陽が動くから」と修正されている。さらに教師は、「学習したことを使って書きましょう」との注意書きを追記した。
男性は、この採点基準を「『地球の自転』をまだ習っていないという理由で、『太陽が動く』と答えろという教育」だと批判。すると、これに同調する教育関係者も出てきた。
陰山英男・立命館大教授は同日のツイッターで、「私なら正解として認めてると思う」。『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者で「坪田塾」の塾長、坪田信貴さんも同日、「『教科書や授業から学ぶこと=学習』ではない」とツイートした。
太陽はあくまで「見かけ上の位置」を動いているに過ぎない。影の向きの変化や日の出・日没はすべて、地球の自転によって起こるため、「地球が回る」という回答は正しいように思える。
学習指導要領「日陰の位置は太陽の動きで変わる」
しかし、ツイートのリプライ欄には、こうした同調意見とともに、男性への厳しい指摘もまた多数寄せられた。
「影が動くことから直接地球が動くことと繋げるのは論理の飛躍がある」
「問いは影の向きであって、影を作る要因となる太陽が文字として書かれないと正解とは言えない」
主な理由として、「地球が回る」では自転なのか公転なのか判断できない、地球の自転を理解するのに必要な「天球」の概念が把握できているか分からない、といった点が挙げられた。つまり、「地球が回る」と回答するならば、説明を補足すべきというわけだ。
実際、地球の自転を公立小学校の3年生で習うことはまずない。現行の学習指導要領上、「日陰は太陽の光を遮るとでき、日陰の位置は太陽の動きによって変わること」(文科省HPより)を学ぶのが目標とされているからだ。
地球の自転のメカニズムを正確に把握しているかどうかにかかわらず、「太陽が動く」という答えは、学習指導要領上「正しい」。
どちらも正しい、とも言えそうな今回の一件。賛成派、反対派双方の熱い議論は、なおも続いている。