妊娠中のインフル感染と予防接種 「子どもが自閉症になりやすい」本当か

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   2016年12月、インフルエンザが例年以上の早さで流行している。妊婦の中にはインフルにかかったり、予防ワクチンを接種したりすると子どもが自閉症になるのではと心配する人が少なくない。

   だが、米国で約17万人の妊婦・子どもを調査した最大規模の研究の結果、「妊娠中のインフル感染や予防接種と自閉症のリスクは関係ない」という報告が発表された。研究者は予防ワクチンの接種を勧めている。

  • 妊娠中に心配なインフルの発熱だが
    妊娠中に心配なインフルの発熱だが
  • 妊娠中に心配なインフルの発熱だが

研究者の間で意見が分かれている

   自閉症は、遺伝や環境の要因で発症すると考えられているが、原因はほとんど解明されていない。また、過去に母体のインフル感染が関係するという報告が出される一方、関連性を否定する報告もあり、研究者の間で意見が分かれている。それだけに、インフルにかかった妊婦の心配は大きく、健康サイト「goo(グー)ヘルスケア」(2016年4月7日付)をみると、次のような相談が目についた(要約抜粋)。

「現在22週の妊婦です。トラブル続きで、妊娠初期の4か月の時にインフルエンザA型に感染。4日前にはB型に感染しました。さすがに2回も感染すると、お腹の子どもがとてもとても心配です。インフルに感染すると統合失調症や自閉症の子どもになりやすいという記事を見て、ネガティブになっています。どうなっても受け止めないといけないと覚悟していますが......」

17万人の子どもの調査で関連性を調べると...

   今回、研究をまとめたのは米国最大の医療団体「カイザー・パーマネント」の研究チームだ。米医師会誌「JAMA Pediatrics(小児科学)」(電子版)の2016年11月28日号に発表した。論文によると、研究チームは同団体の病院で、2000年~2010年に生まれた子ども19万6929人とその母親を対象に、自閉症の発症と妊婦のインフル感染、および予防ワクチンの接種との関連を調べた。

   合計3101人の子どもが自閉症と診断された(全体の1.6%)。また、約1400人の母親が妊娠中にインフルとみられる感染症にかかった(0.7%)。そして、4万5231人の母親が妊娠中にワクチンを接種した(23.0%)。

   その結果、母親がインフルに感染、またはワクチンを接種した子どもと、そうでない子どもの自閉症の発症リスクを比較すると、何ら関連性は見つからなかった。妊娠第2期(13~28週)と第3期(29週以降)に母親がワクチンを接種したことも関連がなかった。ただ、妊娠第1期(12週以前)でワクチンを接種すると、自閉症リスクが若干高まったが、ほかのリスク要因と調整し分析し直すと、統計的に意味がなくなった。偶然の可能性が高いという。

   今回の結果について、研究チームのアウセニー・ゼルボ医師は、論文の中で「米国予防接種諮問委員会(ACIP)は、妊婦の妊娠週数にかかわらず、インフルエンザの予防ワクチンを接種することが望ましいと勧めています。私たちの研究はこの提言を変えるものではありません」とコメントしている。

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