仏アレバ支援の「真の狙い」 三菱重工と2018年「核燃サイクル」問題

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プルトニウムをどうするか

   日本国内では原発の再稼働は遅れ、新設の見通しが全く立たない状況で、原子力産業の苦境が続く。それでも、国際エネルギー機関(IEA)が、2030年の原子力による発電電力量が2013年の1.6倍に増えると予想しているように、「今後の新興国、途上国の経済発展を見通すと、原発に多くを頼らないわけにはいかない」(エネルギー業界首脳)というのが常識。だとすれば、三菱重工としては、「目先、投資の回収の見込みはない」(三菱関係者)としても、世界で原発を売り込んでいくために、アレバに手を差し出すしかなかったというのが、業界の大方の見方だ。もちろん、今後、国内外で増える廃炉ビジネスの分野でアレバが蓄積する知見への期待もある。

   ただ、原発の輸出が目的なら、アレバNPに出資するのが筋。事実、約1年前にアレバ救済が話題になった時点で、三菱重工はNPへの出資検討を表明していて、今もその話は続いているとされる。にもかかわらず、原子炉製造を除く新会社に出資する背景に、核燃サイクル維持という狙いがあるという見方が強い。原燃と共同出資というのも、これを裏付ける。

   原燃は、青森県六ヶ所村の再処理工場建設で、アレバから全面的な技術協力を受けている。再処理工場は試運転でのトラブルが続くなど完成時期の延期を繰り返していることもあり、アレバとの関係強化が重要と判断したとている。そもそも、アレバは日本の使用済み燃料の再処理も請け負ってきた実績がある。

   日本の核燃サイクルは、「要」とされた高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まり、大きな曲がり角を迎えている。2018年は、非核兵器保有国の日本がプルトニウムを持てる裏付けである日米原子力協定の期限で、核燃サイクルのつまずきを受けてプルトニウムをどうするかという問題を突き付けられている。「米国との協定継続の交渉の上で、核燃サイクルの旗を降ろせない事情があり、そのためにも、アレバとの提携が『実績』として重要」(全国紙経済部デスク)という見立てだ。

   いずれにせよ、本業である造船の不振や航空機の開発遅れなど経営上の重荷を抱える三菱重工にとって、民間の純粋な経営的判断としては過大とも指摘されるアレバ出資が、苦渋の判断であることは間違いない。

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