政府が乳児用の「液体ミルク」の解禁に向けた検討を始めた。成分は粉ミルクと同じで、湯で溶かす必要がなく、封を切ればそのまま飲ませることができ、災害時などに有効だが、法令が未整備のため国内流通していない。内閣府の専門調査会は、2016年度内にまとめる報告書に液体ミルクの利便性を盛り込む方針だが、業界団体は、消費者に受け入れられる高品質の製品を世に出すには数年かかるとしていて、簡単にはいかないようだ。
乳児用ミルクについては、食品衛生法に基づく安全基準が粉ミルクしかない。このため、乳児用として液体ミルクの製造・販売はできない。基準のないものは流通させられない、ということだ。ただ、海外では広く流通していて、無菌処理されているので、開封前なら1年ほど常温保存できるということから、個人輸入で使っている人もおり、「知る人ぞ知る」存在だった。
里田まいもブログで「絶対便利」
この液体ミルクが注目され始めたのは比較的最近のこと。2011年の東日本大震災の際にも、海外からの支援物資として届いたことなどから知られ始めた。ミルクを必要とするゼロ歳児を抱えた保育園などで、配給された水を沸騰させて粉ミルクを作り、また容器を煮沸消毒するなどの苦労は大変なもので、2016年4月の熊本地震でも同様に問題になり、4月下旬に北欧から液体ミルクが救援物資として一部保育園などに届き、たいそう重宝したという話が伝わった。
さらに、2月に第1子を出産した米国在住のタレント、里田まいさん(32)が4月21日、ブログで「今こそ、絶対便利だと思う!!未開封であれば長期常温保存可能、蓋をあけて乳首を付ければそのまま飲ませることが出来、水やお湯も必要なし。震災時にはかなり便利と思います。哺乳瓶が消毒出来ずにいるとのコメントもあった...認可されてほしい...」と「解禁」を訴えたことも反響を呼んだ。
インターネットの署名サイト、チェンジオルグでは子育て中の女性が2014年から「おでかけにも備蓄にも使える便利な乳児用液体ミルクを、日本でも製造してください!」と呼びかけてきたが、熊本地震を契機に急激に支持が広がり、これまでに4万2000人以上の賛同を集めている。