公益社団法人の新聞通信調査会が2016年秋に実施した「第9回 メディアに関する全国の世論調査」で、インターネットでニュースを見る人が約7割に達し、新聞朝刊を読む人の割合と肩を並べたという結果が出た。
スマートフォンの普及などに伴い、手軽なネットニュースが幅広い世代に受け入れられるようになった結果とみられる。いわゆるキュレーションメディアの不祥事を発端に「『ネットニュース』の信頼性」を問う声も相次ぐが、「ネットニュース」を読む人の大半が、新聞社の記事を多く載せているポータルサイトから情報を得ていることもわかった。読者は記事や媒体ごとに信頼性を吟味する必要もありそうだ。
新聞を毎日読む人でも過半数がネットニュース見る
ネットニュースを見る人の割合(閲覧率)は年々高まっており、2010年度の57.1%から今回は69.6%まで上昇した。一方、新聞朝刊を読む人の割合(閲読率)は10年度の82.9%から今回70.4%まで低下した。10年度に25.8ポイントあった双方の差は、6年間でわずか0.8ポイントにまで縮まったことになる。
15年度の前回調査と比較すると、ネットニュースを閲覧している人は20代を除く全世代で増加している。最も増加率が高かったのが60代で、8.2ポイント増えた。60代の閲覧率自体は55.7%とようやく半数に達した程度だが、スマートフォンの普及もあり、今後さらに上昇していくとみられる。
新聞通信調査会が今回の調査結果を詳しく分析したところ、新聞を読まない人ほどネットニュースの閲覧頻度が高くなることも分かった。ただし新聞を毎日読む人であっても、ネットニュース接触率は57.3%にも達したという。
「原則無料」「いつでもどこでも読める」という手軽さが魅力のネットニュースは、新聞を読まない人の主要な情報源となると同時に、新聞購読者にとっても存在感のあるものとなってきているようだ。
「ネットニュース」見る人は9割がポータルサイトから
最近では、DeNAが医療情報サイト「WELQ」をはじめとする10のキュレーションメディアを非公開にした。根拠が明らかではない情報や、著作権を尊重せず盗用が疑われる記事が多数掲載されていると問題視されたためで、大きな騒動となると同時に「ネットメディアの信頼性」が改めて問われる出来事となった。
ただ、今回の調査では、インターネットニュースをどういったサイトで見るかについても質問している。圧倒的に多かったのがヤフーなどのポータルサイト(89.9%)で、「新聞社・通信社の公式サイト」を挙げたのは20.5%だった。
ポータルサイトには、新聞社・通信社、J-CASTニュースのようなネット専門のニュースサイトから記事が集まり、ポータルサイトの編集部がトップページに掲載する記事の選定や見出しの作成を「人力」で行っている。一連の問題を起こした「キュレーションメディア」の記事が、こういったポータルサイトのトップページで取り上げられることは皆無に近く、今回の調査が念頭に置いている「ネットニュース」とは「別物」だと考えるのが自然そうだ。
いわゆる「ネットニュース」だけみても、新聞社やテレビなどのマスメディアが記事を配信しているものから、J-CASTのようなネット専門のニュースサイトのもの、ネット上の情報をまとめたキュレーションメディアやバイラルメディアのものまで幅広くあり、コンテンツの作り方はそれぞれで異なっている。ネットメディアが乱立する中、読者は「取材の有無」「情報の正確さ」といった点から、それぞれの信頼性を個別に見極める必要がありそうだ。
調査は新聞通信調査会が8月19日から9月6日にかけ、全国18歳以上の5000人を対象に実施。サンプリングは住民基本台帳を用いた層化二段無作為抽出法で行った。結果は10月22日に公表され、会報「メディア展望」12月号に分析記事を掲載している。