日本最大の有料多チャンネル放送「スカパー!」を展開するスカパーJSATは、サッカー・Jリーグの放送から2016年のシーズンを限りに撤退する。
スカパー!は、2007年のシーズンから優先放映権を獲得して以来10年間にわたってJリーグの試合を放送。スカパー!にとっては「キラーコンテンツ」であり、サッカーファンにはおなじみの存在だった。
放映権のサブライセンス交渉が決裂
スカパーJSATはJリーグ放送からの撤退を、2016年12月15日に公式サイトで発表した。「スカパー!からの大切なお知らせ」のタイトルで、高田真治社長が、
「スカパー!は、2017年シーズン以降の放映権を獲得した会社と、これまでどおりスカパー!で放送できるように交渉を続けてまいりましたが、成立に至りませんでした。
スカパー!での放送を楽しみにしてくださっていた皆様に、このようなご報告をせざるを得ないこと、また今日までご連絡が遅くなりましたことを、深くお詫び申し上げます。誠に申しわけございません。
つきましては、Jリーグ戦の放送予定がないことに伴い、Jリーグ関連セットは1月末をもって終了とさせていただきます。今までご契約いただき、ありがとうございました。」
と、視聴者への感謝と撤退に至った経緯などを綴っている。
サッカー・Jリーグは2016年8月、2017年から10年間のJリーグの放映権契約を、約2100億円で英動画配信大手のパフォームグループと結んだ。そのため、スカパー!はパフォームグループにサブライセンス(再供与)を求めて交渉を続けてきたが、条件は厳しく不調に終わった。交渉が決裂したことで、Jリーグの試合中継からの撤退を余儀なくされたというワケだ。
これまでスカパー!はJ1とJ2の全試合とJ3の主な試合を中継してきたが、2017年のシーズンから放送できなくなる。
これに伴い、Jリーグは12月15日、「2017年のシーズンから、J1・J2・J3リーグはライブストリーミングサービス『DAZN』で全試合生中継いたします。なお、有料ライブ放映は『DAZN』のみの放映となります」との声明を発表した。
「DAZN(ダ・ゾーン)」は、パフォームグループが運営。月1750円(税別)で、米大リーグやプロ野球、海外サッカー、バスケットボールやアメリカンフットボール、格闘技とさまざまなスポーツが、インターネットを通じてスマートテレビやパソコン、スマートフォンで視聴できる。
一方で、Jリーグは、地上波とBS放送についてはNHKとの放送権契約を更新している。
放送終了による経営への打撃はない
インターネットの掲示板やツイッターなどでは、
「わぁああああ、やっぱり切られたか。きっと吹っかけられたんだろうな」
「Jリーグ オワコンまっしぐらw」
「放映権を海外に売って国内は劣化させんの? これじゃあ先細りじゃん?」
「みんなこれからネットで見んの? 俺はスカパーで見たい」
などと、戸惑いや「ショック」を受けたという声が少なくない。
なかには、
「おいおいスカパー大丈夫か。見るもんなくなるじゃんwww」
「スカパー、解約するかな」
と、Jリーグという「キラーコンテンツ」の放送終了による視聴者離れを心配する声や、スマートフォンなど向けのネット動画配信の台頭で衛星放送そのものが「先細り」ではないのか、とスカパー!の経営を心配する声も寄せられている。
スカパー!の加入件数(個人)は減少傾向にある。最近の3年をみると、2015年度末は348万件と前年度比0.6%増えたが、14年度末は6.7%減の346万件、13年度は2.9%減の371万件だった。直近の2016年11月30日現在では337万3646件だった。
このうちJリーグの放送を目当てに加入した人がどの程度いるのかは不明だが、スカパーJSATは、「(Jリーグ放送を)楽しみにしていてくださっていた人が契約を取りやめていく可能性が高まることは避けられないと考えています。また、加入を考えていた人がネット動画などで済ませてしまうこともあるでしょう。(放送できなくなったことを)とても残念に思っています」と話す。
ただ、収益面への影響については、「Jリーグ放送はキラーコンテンツではありますが、制作費も相応にかかっていたため、利益が出るところまでには行っていませんでした」と話し、放送終了による経営への打撃は「ほとんどありません」という。
ただ、スカパー!は2017年のサッカー・天皇杯の試合中継は続けるほか、「Jリーグラボ」や「クラブ応援番組」といったJリーグの関連番組の放送は継続。さらに17年2月にはサッカー専門の24時間チャンネル「スカサカ!」を開局するとしている。