薬が効かない薬剤耐性菌の拡大が世界的な脅威になっているが、千葉大学の研究チームが重い肺感染症を引き起こす病原菌の薬剤耐性メカニズムを無効にすることに世界で初めて成功した。
研究成果は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)の2016年12月9日号に発表された。耐性菌を無力化する新薬が期待できるという。
悪玉タンパク質を増やす遺伝子を破壊
千葉大学が12月9日に発表した資料によると、薬剤耐性を無効にしたのは「アスペルギルス・フミガタス」という病原菌。肺感染症を引き起こし、治療が遅れると命にかかわる。欧州を発端に日本でも2013年から見つかり、問題になっている。治療にはアゾール薬という抗真菌薬が使われていたが、効かない菌が増えた。
そこで、研究チームはアゾール薬が効かない菌を詳しく調べると、アゾール薬が標的にする病気のもとになるタンパク質が異常に多いことがわかった。このため、タンパク質を増やす因子の遺伝子を破壊すると、アゾール薬の効力が8~64倍増加した。これだけ効力が高くなると、本来の治療薬としての効果が期待できるという。