「透けない白衣」を開発したメーカーに、なぜか抗議が届いている。
女性看護師向けに、下着の色や柄が透けないとして特許を取得した画期的な商品だが、男性からは不満を込めた問い合わせが来ているとメーカーの担当者は明かす。だが一方で、J-CASTヘルスケアの取材に「ある程度予想された抗議でした」とも話した。
1年間で2つしか売れなかったのに
制服・作業服メーカーの大真(たいしん、本社・東京都千代田区)が開発した「裏地付透けない白衣」は、その名の通り「透けない」ことをセールスポイントにした商品だ。16年12月13日の取材に答えた大真の開発担当者・西原成幸氏によると、白のYシャツやブラウスに代表されるように、白色は光の透過性が高く、下着が透けやすい。女性看護師用の白衣は「透けにくい」商品は多かったが、「透けない」と言い切るものはなかった。大真は約5年かけて開発した特許技術で光の遮断に成功し、2015年8月に発売した。
西原氏によると「PRに失敗して当初はほぼまったく売れなかった」。しかし、16年夏に東京都中小企業振興公社のニューマーケット開拓支援事業対象商品に選ばれると、たちまち注目を集めた。それまでの約1年で累計2点だった販売数が、大幅に増加したという。
商品が知られるようになると、「待ってました」「ぜひ買いたいので商品サンプルを見たい」「透けない白衣の存在を知り、居ても立ってもいられない」といった問い合わせが女性看護師から数多く寄せられたと西原氏。「病院の多くの女性スタッフが購入したいと言っている」と、大口の案件も舞い込んだと、ホクホクのようだ。
ところが、男性からは全く逆の反応が飛び出した。
男性医師、ベテラン看護師長はどう考える
「男の夢を壊すな」「技術の悪用」「透けるのを楽しみにして病院に行ってるのに...」「この世で一番必要のない研究開発だ」といった男性からの意見が、会社への問い合わせのほか、ネット掲示板やSNSでも沸いた。「透ける」に悩んでいた女性のことを考えると何とも身勝手な批判だが、こうした抗議が寄せられたのは事実だ。西原さんは「16年9月の、ある2週間で集計したところ、A4用紙60枚分の意見がありました。賛否合わせての集計ですが、この時期は否定的なものが多かったです」と明かす。
ただ、「否定意見が出るのは、ある程度予想されていました」。商品を病院に売り込みに行った発売当時ですでに、男性医師から「白衣が透けて喜ぶ男も結構いるんですよね」との声が出ていたという。女性看護師でも40代以上の看護師長クラスになると、若い看護師への指導に際し、プロ意識から透けるのを受容した上で、嫌なら中に余分に着てガードするように言う人もいたそうだ。
大真では、寄せられた抗議を「貴重な意見として素直に受け止めます」(西原氏)としている。