アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは、卵アレルギーになりやすいが、生後6か月からゆで卵を少しずつ食べさせると、卵アレルギーの発症を80%抑えられるという研究を国立成育医療研究センターがまとめ、2016年12月9日に発表した。
研究成果は国際医学雑誌「ランセット」(電子版)の2016年12月8日号に掲載された。幼児の食物アレルギーについては、2016年10月に英国のチームが生後4か月から卵やピーナッツを食べさせると予防になるという研究を発表したばかりだ。
毎日少しずつ食べて耐性をつける
国立成育医療研究センターの12月9日付発表資料によると、研究チームは、生後まもなくアトピー性皮膚炎になった赤ちゃん121人を次の2つのグループに分け、アレルギーの発症リスクを調べた。
(1)生後6か月からゆで卵とカボチャの粉末を毎日食べ続ける60人。卵の量は、生後6~8か月は1日50ミリグラム、9~11か月は250ミリグラムと段階的に増やす。
(2)生後6か月~11か月まで、卵を食べずにカボチャの粉末を毎日食べ続ける61人。
そして1歳になった時点で卵アレルギーを調べた結果、卵を食べていた60人のうち、卵アレルギーを発症したのは5人(8%)だったが、カボチャだけを食べていた61人の中の23人(38%)が発症した。卵を食べることによって発症を80%抑えることができたことになる。少しずつ卵を食べることで耐性がついたと考えられるという。実験期間中、赤ちゃんは全員アトピー性皮膚炎の治療を受けた。また、卵を食べた赤ちゃんに重い副作用はなかった。
研究チームでは、発表資料の中で「国内ではアレルギーを懸念して幼いうちに卵を食べさせない傾向が強く、3歳児全体の6%近くが医師の指示で摂取を制限しています。予想を超える大差で、生後6か月ごろから少量ずつ食べ始めたほうがよい結果になる仮説を実証できました。今後はできるかぎり早期から治療することで、子どものアレルギーを減らしていけるよう研究したい」とコメントしている。
親が自己流でやらず必ず専門医に相談
「ピーナッツと卵は生後4か月から食べさせるとアレルギーの発症リスクが減る」という研究が最近、英国でも発表された。インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームが米国医師会誌「JAMA」(電子版)の2016年9月20日号に発表した。英国食品基準庁の依頼で行なわれ、約20万人を超える子どもを対象にした世界最大規模の研究だ。論文によると、次のことが明らかになった。
(1)卵は生後4~6か月から食べ始めると、食べない子どもに比べ卵アレルギーになるリスクが44%減る。
(2)また、ピーナッツは生後4~11か月から食べ始めると、ピーナッツアレルギーになるリスクが71%減る。
このように、食物アレルギーの予防には、原因となる食べ物を早い段階で食べさせた方が、過剰な免疫を抑える細胞が活性化し耐性がつくという考えが、研究者の間では有力になりつつある。しかし、今回の研究は専門医の指導のもと、アトピー性皮膚炎の治療も徹底して行っている。同研究センターでは、発表資料の中で、「安全性に問題が残るため、(親が)自己流で行うと危険を伴います。卵の加熱が不十分だと抗原性が高くなり危険です。すでに卵アレルギーと診断されている幼児に卵を与えるべきかどうかを含め、必ずアレルギー専門医に相談してください」と念を押している。