自閉症の子は先入観にとらわれない 「悪い子」の「良い行動」をどう判断

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   自閉症の子どもは人を信じやすく、見かけの行動で善悪を判断しやすい――。こんな研究を京都大学など6つの大学と平谷こども発達クリニック(福井市)の研究チームがまとめ、英の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)の2016年11月29日号に発表した。

   研究者は、自閉症の子どもは「先入観にとらわれない」という特質がある半面、悪意のある相手にだまされやすいことがわかり、いじめ防止などに努めたいという。

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相手の内面より行動で善悪を見る危うさ

   京都大学が11月30日に発表した資料によると、研究チームは、自閉症の小中学生19人と自閉症ではない小中学生20人に、「良い子」と「悪い子」が登場する物語で読んでもらい、登場人物に対する見方を比較した。登場人物の特性と行動、物語の結末を操作した文章を読んだ後、登場人物の善悪を判断させた。その結果、自閉症の子は、そうでない子に比べ、登場人物の特性より人物がとった一時的な行動にもとづいていて善悪を判断することがわかった。

   具体的には、物語が良い結末になるケースを例にとると、次のようになる。(注:善悪判断は「良い子」「悪い子」の二者択一で、「良い子」と答えていない場合は「悪い子」と答えている)

   (1)良い子が良い行動をとる場合=自閉症の子もそうでない子も、ほぼ100%が「良い子」と判断する。

   (2)良い子が悪い行動をとる場合=自閉症の子は30%が「良い子」と判断。そうでない子は40%が「良い子」と判断。

   (3)悪い子が良い行動をとる場合=自閉症の子はほぼ100%が「良い子」と判断。そうでない子は70%が「良い子」と判断。

   (4)悪い子が悪い行動をとる場合=自閉症の子は30%が「良い子」と判断。そうでない子は35%が「良い子」と判断。

   ここでのポイントは、(3)の「悪い子が良い行動をとる場合」だと研究者は指摘する。自閉症の子どもは、普段は「悪い子」に対し、一時的に「良い行動」をとったことを明示されると、ほぼ100%が「良い子」と判断してしまった。自閉症の子どもは他人を判断する際、その人が持つ特性より、その人がとった行動に基づいて判断する傾向が強いことが確認された。

   この結果について、研究チームの京都大学の米田英嗣教授は、発表資料の中でこう語っている。

「自閉症の子どもは、相手の特性といった内面の情報を判断することが難しく、行動を手がかりに善悪を判断していることがわかりました。このことは、先入観にとらわれず判断できる可能性があるのかもしれません。相手がだまそうとする際に相手の悪意に気がつかないことがあります。今後は、自閉症の人に対する詐欺被害やいじめ防止につながる研究を進めていく考えです」
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