「わずか約6時間の衆院審議で、様々な問題をはらむカジノを賭博の例外扱いにしようとする。あまりに乱暴かつ無責任だと言うほかない」
開会中の臨時国会の最終盤の焦点になっているカジノ解禁法案について、2016年12月7日の新聞の社説の書き出しだ。朝日や毎日ではない。他でもない、日ごろ安倍晋三政権の政策に肯定的な論調が目立つとされる読売の社説なのだ。
自民党は12月14日までに可決の構え
同法案は、正式には「統合型リゾート(IR)整備推進法案」といい、カジノをはじめ会議場、ホテルなどが一体となった施設(IR)の整備という大枠を整え、政府が1年以内をめどに、カジノ運営のルールなどを定める別の実施法を制定するとしている。要は、刑法で禁じている賭博の例外として、カジノを解禁するものだ。
「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連、会長・細田博之自民党総務会長)が旗を振る議員立法だが、安倍政権はIRを成長戦略の一環と位置付け、安倍首相自身がかつて、議連の最高顧問を務め、シンガポールのカジノを視察、この12月7日の党首討論では「さまざまな投資が起こり、雇用がつくられる」と効果を強調しており、安倍政権肝入りの法案といえる。
しかし、法案には、「ギャンブル依存症」の広がりによる犯罪や自殺の増加、青少年への悪影響、さらに資金洗浄(マネーロンダリング)や反社会的勢力の関与を懸念する声も強い。期待される経済効果についても、マカオなど東アジアではカジノが乱立で市場が飽和状態にあり、過剰な期待を戒める声も多く、大阪へのカジノ誘致を熱望する日本維新の会などを除き、野党が強く反対している。
法案は衆院内閣委員会で審議が始まった11月30日からわずか1週間の12月6日に衆院を通過した。この間、内閣委員会の審議時間わずか6時間足らず。与党の公明党は意見集約ができず、党議拘束を外す異例の展開に。自民党は12月9日の成立を打ち出したが、参院の内閣委員長は民主党が握っていることから、委員長職権での強引な議事運営ができず、ひとまず12日に参考人質疑をするところまで決まった。自民党は14日までの会期内に成立させる構えで、委員長が採決しなければ本会議にいきなり上程して可決する「ウルトラC」も検討しており、ギリギリまで緊迫の展開が続くのは必至だ。