オプジーボ「薬価」に加算されたもの 超高額薬が生まれる仕組み

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   超高額が話題となった抗がん剤オプジーボの薬価が、特例で2017年2月から引き下げられる。厚生労働省は当初、2年後の改定時期まで延ばすつもりだったが、「年 1人分3500万円」への国民の驚き・批判が無視できなくなり、2016年11月の中央社会保険医療協議会 (中医協) で急きょ決めざるをえなかった。

   とはいえ、まだ高額なのは事実。これからも続々と超高額薬が出てくると予想されるなか、日本の保険制度を維持するには、今後の薬価の決め方や保険適用の見直しなどの議論が不可欠だ。

  •  オプジーボ には「国産薬応援加算」もあったとの声も(写真はイメージ)
    オプジーボ には「国産薬応援加算」もあったとの声も(写真はイメージ)
  •  オプジーボ には「国産薬応援加算」もあったとの声も(写真はイメージ)

製薬会社に配慮したルール

   オプジーボ (一般名ニボルマブ) は2014年7月悪性黒色腫、15年12月非小細胞肺がんに保険適用になった。日本の薬価は 100ミリグラム約73万円だが、その後に決まった米国は約30万円、英国は約14万円で、日本は米国の2.4 倍、英国の4.8 倍の高額だ。

   体重60キロの肺がん患者 1人の年間の薬代は、英国約 780万円、米国約1394万円に対し、日本は何と約3460万円。ダントツの高額のうえ、数万人の対象患者分が 1兆7500億円、との予測が関係者に衝撃を与えた。対象 470人の悪性黒色腫の総額31億円が 500倍以上になる。

   薬価は製造費用とあまり関係がなく、巨額な研究開発費を強調して高薬価を求める製薬企業と国・保険機関の交渉で決まる。日本は中央社会保険医療協議会 (中医協) などでの審議をもとに最終的には厚生労働省が決めるが、「効果が高い」「副作用が少ない」といったことが認められると高額加算されるなど、企業に配慮したルールがいくつもある。さらに小野薬品工業が中心になって開発したオプジーボには、暗黙の「国産薬応援加算」もあったといわれている。

正確には抗がん剤ではない

   ただ、オプジーボには誤解も多いようだ。

   がん患者会「生きがい療法ユニオン」の機関誌が、80人の患者に使った今村貴樹・千葉ポートメディカルクリニック院長の講演を掲載している。今村さんによると、オプジーボは、正確には「抗がん剤」ではなく「免疫チェックポイント阻害剤」で、がんで免疫機能が落ちた人の免疫を回復する薬。抗がん剤のような副作用はない。 3週に1回、計4回の注射で有効な人に8回注射すると免疫が長期にわたって改善する。

   また、進行がん患者の半分にはまったく効果がなく、半分に有効で、さらにその半分には大変な効果がある。よく効くのは、肺、卵巣、乳、胃、食道がん。多くは半年の治療で十分で、効かない人に 1年、あるいはそれ以上治療する意味がなく、1年分の薬代といった表現や計算は、現実的には不適切だ。

   それでも、米国の薬は、実際は薬価の半分程度で流通しており、英国の公的機関は他の薬との比較から「まだ高い」と、オプジーボの薬価を半値にするよう企業に交渉中だ。17年2月以降は保険支出、税負担は年間で何千億円も減る見込みとはいえ、日本のオプジーボはまだまだ世界的にかけ離れた高額を維持することになる。

   会計検査院は、政府の15年度決算で 1兆2000億円にむだ遣いを指摘しているが、薬価や診療報酬点数が厚労省の一存で決まる現在の制度の適否も含めて、根本的な議論や改革が必要ではないだろうか。

(医療ジャーナリスト・田辺功)

姉妹サイト