歌人・与謝野晶子ゆかりの品々を展示する、与謝野晶子記念館(大阪府堺市)に中高生が「殺到」している。
きっかけは、マンガ、アニメ、小説で展開されている人気作品「文豪ストレイドッグス」(以下、「文スト」)とのコラボレーションだ。与謝野晶子や芥川龍之介といった実在の文豪が、作品名を冠した超能力で活躍する同作。今、若い来館者を獲得したい全国の文学館が、「文スト」とのコラボ企画を続々打ち出している。
高校生以下の来館者数が、8月は前年比8倍
「予想以上の反響に驚いています」――J-CASTニュースの取材に2016年12月9日、そう語るのは、与謝野晶子記念館の担当者だ。
夫・鉄幹と出会った浜寺公園や生家など、晶子ゆかりの地が点在する堺。そうした観光資源を生かすため、15年にオープンしたのが同館だ。しかし、来館者のほとんどは40代、50代、60代。隣接する文化施設「千利休茶の湯館」が「茶の湯体験」などで学校行事に使われているのと異なり、若い来館者の獲得に頭を悩ませていた。そんなときに出会ったのが、「文豪ストレイドッグス」だ。
作中の晶子は、超能力「君死給勿」(きみしにたまうことなかれ)であらゆる傷を治癒させる、という設定だ。もちろん史実ではない訳だが、同館スタッフはこれを若い来館者を呼び込む好機と考えた。
「運営グループで企画を立て、KADOKAWAさんに相談しました」
その努力が実り、16年7月25日にコラボレーションキャンペーンの第1弾を実施。原作のコミックスや小説を持ち込んだ来館者の観覧料を割り引いたり、来館者にオリジナル缶バッジを無料配布したりと、さまざまな手法でアピールした。その結果、高校生以下の来館者数が、8月は前年比8倍を記録した。
「家族連れもたくさんいらっしゃいますし、平日の15時~16時ごろは学校終わりの学生さんが制服姿でいらっしゃいます」
「実際の晶子もカッコいい」
11月1日には、コラボキャンペーンの第2弾「スタンプラリー in堺」を実施。配布物も缶バッジに加えて、クリアファイルを用意した。担当者によると11月、高校生以下の来館者数は前年比8倍を超えたという。
「アンケート用紙にも『アニメがきっかけで来ました』『アニメの晶子とは全然違うけど、実際の晶子もカッコいい』といった感想が書き込まれています。若い人に与謝野晶子を知ってもらうきっかけになったと実感しています。これから冬休みに入りますので、さらなる伸びが期待できそうです。ノベルティの数も急きょ増やしました」
今、全国の文学館は「文スト」とのコラボに躍起だ。中原中也記念館(山口市)は7月28日から9月25日まで行われた企画展「太宰治と中原中也」で、作画担当者・春河35(はるかわ・さんご)さんの描き下ろしイラストを展示し、コラボグッズを販売した。
その太宰の故郷、青森県五所川原市にある「太宰治記念館 斜陽館」でも、10月14日から12月28日まで、観覧料割引やキャラクターの等身大パネル設置などのコラボキャンペーンを実施中だ。ちなみに、太宰、中也とも作中に登場する。
「文スト」との「コラボバブル」に沸く各地の文学館。若い来館者増加の起爆剤になるのだろうか。