米製薬会社がエイズの治療薬を独占的に販売、薬価を55倍も値上げしたことに国際的な批判が集まったが、オーストラリアの高校生が学校の実験室で薬を安く作ることに成功、強欲な製薬会社の鼻を明かし、話題になった。
すると、製薬会社の元最高経営者が「薬を作るならタダで働く高校生を使うべきだな」とツイッターで皮肉を連発、再び物議を醸している。2016年12月1~5日にBBC、AFP通信、ハフィントン・ポストなど海外メディアが報道した。
トランプ氏にもかみつく「米国一の憎まれ者」
BBCやAFPなどによると、ことの発端は2015年8月、米製薬ベンチャー「チューリング・ファーマシューティカルズ」が、現在エイズに最も効果があるとされる治療薬「ダラプリム」の販売を独占する権利を手に入れたこと。同社の最高経営責任者(CEO、当時)マーティン・シュクレリ氏は、それまで1錠13.50ドル(約1540円)だった薬価を一挙に約55倍の750ドル(約8万5500円)に値上げした。この暴挙は国際的な批判を浴び、その後、半分の1錠375ドル(約4万2750円)に値下げした。
シュクレリ氏は、「次期米大統領のドナルド・トランプ氏にもかみつく男」(AFP通信)として知られ、米メディアから「米国で最も憎まれている男」と呼ばれている。2015年12月、証券取引にからむ詐欺容疑で米連邦捜査局(FBI)に逮捕され、同社のCEOを辞任した。
「ダラプリム」を作り出すことに成功したのが、豪州シドニー・グラマー・スクールの男子高校生8人(全員17歳)だ。彼らは、「社会的に問題のある薬」の開発に取り組むことに意義を感じ、1年間かけて高校の化学実験室で研究を進めた。シドニー大学の化学者らの助言を得ながら薬効成分である「ピリメタミン」の抽出に成功した。
特許の問題があるため、すでに知られている「ダラプリム」のレシピを使わず、別の化合物として再構築した。新薬の作り方をインターネット上にあるソースコード共有サービス「GitHub」(ギットハブ)に公開、オープンソース化し、ビル・ゲイツ氏が支援する製薬技術開発のオープンソース「マラリア・コンソーシアム」の助力を得た。