ヨーロッパ型和解
党首討論用の想定問答は筆者が作成していたので、資料も添付して、詳細な反論を用意した。それを一部再現すれば、
「小沢代表の話に、明らかな事実認識の間違いがあった。アメリカは第2次大戦中のドレスデン爆撃についてドイツに謝罪した事実はない。ドイツはアメリカに謝罪は求めていない。アメリカとドイツの間では、ドレスデンの問題は、謝罪の問題ではなく、和解の問題として考えられている。小沢さんは『和解』という歴史問題克服の努力を全く理解せず、日本政局に利用した。政局利用のための、付け焼刃的な生半可な知識で、他国の歴史和解の努力を曲解するのは、現に慎むべきだ」
とある。
歴史認識では重要な問題なので、民主党小沢代表の誤解は決定的ミスであったが、筆者の記憶では、当時のマスコミは安倍政権を攻撃できるなら何でもありで、小沢氏の事実誤認をどこも報道していない(当時の塩崎恭久官房長官が、会見で『(米国が)謝罪した事実はない』と述べた事は、NHKなどが報道)。安倍首相は、民主党代表が事実誤認をしたこと、ヨーロッパ型和解が望ましいことをその当時から分かっていた。
アジアでは、中国と韓国のように、日本に対して戦争責任を主張し、まず謝罪せよとの、古いタイプの言い方が今でもまかり通っている。それが、今(2016)年は、日本だけがいち早くヨーロッパ型の和解(戦争責任・謝罪なしで、ともに追悼)を取り入れた記念すべき年になるだろう。
安倍首相は、歴代首相の誰よりも外交に力を入れている。延べ訪問国数は100を超え、歴代トップである。そこでの思いは、戦後を終わらせることだ。第1次安倍政権の時、「戦後レジームの総決算」という言葉が使われていたが、今は使われていない。口の言葉よりも行動して実践しているのだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。