DeNAの守安功社長らは2016年12月7日、自社の運営するキュレーション(まとめ)メディアをめぐる騒動について、東京都内で記者会見を開いた。
会見には、創業者の南場智子会長も同席。夫を介護した経験からヘルスケア事業を立ち上げた経験のある南場会長は、「大変に申し訳ない」と一言。騒動の発端となった医療情報サイト「WELQ」について、「『いつこんな重い情報を扱うようになったのか』と愕然とした」と振り返った。
守安社長は辞任を否定
会見に出席したのは、南場会長、守安社長、小林賢治・同社執行役員の3人。まず、守安会長と小林氏から、本件に関する「第三者委員会」や、著作権侵害や健康被害の報告を受け付ける「相談窓口」の設置が発表された。加えて、非公開化となった10媒体の今後について、「第三者委員会の調査結果次第」「今後もバーティカルな(編注:分野特化型の)メディアをビジネスとして成立させることに挑戦していきたい」と継続を示唆した。
守安社長は問題の背景について、
「2012年ごろゲーム事業の成長が止まって以降、さまざまな新規事業にトライしてきたが、いずれも期待通りに成長させるのが難しかった。スタートアップの良さを温存しながら成長したい、という思いと一部上場企業としてのバランスを取るということが両立できなかった」
と語る一方、辞任は否定。「私が全力で責任を果たしていく。新たなDeNAを作るのが私の責任だ」と強調した。
発注記事と一般ユーザーの投稿記事が見分けられない状態に
その後の質疑応答では、記事作成のプロセス、各メディアの運営体制をめぐる質問が飛び交った。
同社はこれまでの発表で、12月1日までに非公開化された9媒体に関し、不正確な情報発信や、外部ライター向けの記事作成マニュアルに「他サイトからの転用を推奨していると捉えられかねない点があった」と認めている。
7日の会見ではこれに加え、9媒体の記事の「6割から9割」(WELQは「9割程度」)がクラウドワーキングサービスを通じて外部ライターに発注され、発注記事と一般ユーザーの投稿記事が見分けられない状態になっていたことが明かされた。
さらに「マニュアル類は見たことがなく、11月29日の報道記事で初めて存在を知った」(守安社長)、「WELQの情報について認識していなかった」(南場会長)など経営幹部が各メディアの運営状況を把握していなかったことも浮き彫りとなった。
当日になって急きょ会見への出席が決まった、11年に夫の病気を理由に社長から退いた南場会長は、夫の介護経験からヘルスケア事業を立ち上げ、これが14年に子会社「DeNAライフサイエンス」の設立という形で結実。同社は同年、「WELQ」の前身となった医療情報サイト「Medエッジ」をオープンさせた。
しかし、Medエッジは16年2月、「筋トレやダイエットといったライトなヘルスケア」(守安社長)として15年秋にオープンしていたWELQに統合された。医療情報サイトの不祥事から始まった今回の騒動。南場会長は、自身が立ち上げにかかわったMedエッジの「失敗」から語り始める。
南場会長がWELQの騒動を知ったのは「報道されてから」
当初、「難しい学術論文を患者にわかりやすく届けることを目的にしていた。医療のプロが執筆し、メディカルドクターや研究者にも関わってもらっていた」というMedエッジ。
しかし、ユーザーの数は伸びず、「専門的な情報を素人に届けるサポートを、ビジネスとして続けられる方法を見つけられなかった」という。
「患者の家族は担当ドクターから受ける説明だけでなく、他にどういう治療法があるか、この分野の最新研究はどうなっているか知りたいのでは、そこに需要があるのでは、と考えていた。しかし、需要は小さかった。課金制を導入して患者さんにも説明をしたが、驚くほどサブスクライバー(課金読者)が増えなかった。『世の中の患者が自分と同じニーズを持っているはずだ』という認識を改めなければならないと思った」
ネット上の医療情報について、現在の認識は
「(夫の)闘病が始まりネットの情報も調べた。しかし、『ガンに効くきのこ』といった話が出てくるため『ネットの情報は役に立たない』『信頼できない』と判断した。その後、学術論文を読んだり、専門家からレクチャーを受けたり、という方向になっていった」
という。そのため、南場会長がWELQの不祥事を知ったのは「報道されてから」。会見では、
「ガンという言葉で検索し、WELQの記事が出てきたとき、『いつこんな重い情報を扱うようになったのか』と愕然とした」
と沈痛な面持ちで語った。