パーキンソン病は主に50歳以上の人が発症する脳神経の病気。進行性の病気で、国の難病に指定されており、国内では約12万人の患者がいると推定されている。
これまで有力な治療法がなく患者を苦しめてきたが、米カリフォルニア工科大のグループがこのほど、「病気の発症には腸内細菌が関係している」ことを突き止め、新治療法開発につながる画期的な成果として注目を集めている。
特殊なマウスを使った動物実験で確認
この成果は米国の学術誌「セル」の2016年12月1日号に発表された。同大のティモシー・サンプソン博士らのグループが、パーキンソン病を発症する特殊な実験用マウスを開発し、それを使った動物実験で明らかにした。
パーキンソン病は、手足がふるえたり、身体の動きが遅くなったり、筋肉が固くなったり、ころびやすくなったりする進行性の神経難病だ。1817年に英国のパーキンソン医師が報告、パーキンソン病と名づけられた。世界各国で研究が進められているが、原因は不明で、治療は症状を改善するための対症的な薬物治療が中心になっている。
研究グループはマウスの遺伝子を組み換えてパーキンソン病を発症するようにした特殊なマウスを使った。パーキンソン病患者の神経細胞にはαシヌクレインという特殊なタンパク質が異常に多くたまり、ドパミンという脳に不可欠な神経伝達物質を作り出す細胞が減ることで起きることがわかっている。
こうしたマウスのうち、腸内細菌が正常のマウスはパーキンソン病を発症したが、抗生物質を使って腸内細菌を完全に無菌にしたマウスは、遺伝的にまったく同じなのにパーキンソン病にはならなかった。さらにパーキンソン病患者から採取した腸内細菌を移植したマウスは、健康な人から採取した細菌を移植したマウスよりも病気の進行が激しかったという。
こうした実験結果から、グループは「現時点で、どの腸内細菌が関与しているか特定するのは難しいが、腸内細菌が病気の発症に関わっていることは間違いない」と結論づけた。