安倍晋三首相が米ハワイ州の真珠湾を訪問すると公表した。日米開戦からまもなく75年。米政府も好意的な評価を示している。
「2度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、その未来に向けた決意を示す。同時に日米の和解の価値を発信する機会にもしたい」
ケネディ駐日米大使も歓迎「友好と同盟の証」
2016年12月5日夜、安倍首相は訪問の狙いをこう語った。日程は12月26~27日。オバマ大統領と最後となる首脳会談を行うとともに、旧日本軍による真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊する。
オバマ氏は今年5月、現職の米大統領として初めて、米軍が原子爆弾を投下した広島を訪問している。そのため、今回の真珠湾訪問は「返礼」の意味合いがあるとの見方もあるが、菅義偉官房長官は12月6日の記者会見で「広島訪問とは関係するものではないと思っている」とこれを否定。一方で「本年が真珠湾攻撃75年という事も総理の頭にあったのではないか」と述べた。
米ホワイトハウスは5日に声明を発表し、「両首脳の訪問は、かつての敵国同士が最も親密な同盟国となり、共通の利益と価値の共有により結束しているという和解の力を示すだろう」と評価した。キャロライン・ケネディ駐日米大使も6日、「真珠湾訪問は日米間の友好と同盟の証です」と歓迎するツイートを投稿している。
安倍首相としては、歴代首相が成し遂げられなかった真珠湾訪問によって「日米の戦後」に終止符を打つとともに、日米同盟の強固な関係を内外にアピールする考えだ。
日ロ首脳会談の成果で「年明け解散」説
一方で「歴史的な偉業」は年明け衆院解散の布石ではないか、との観測も出ている。
もともと年明け解散は、12月15日~16日に行われる日ロ首脳会談の成果を掲げて行われるとの見立てがあった。その後、北方領土問題の大きな進展は期待薄となったため頓挫したと思われていたが、今回の外交成果で内閣支持率を伸ばし、そのまま解散総選挙に打って出る可能性が浮上したというわけだ。
6日配信の日経新聞電子版では、自民党幹部が「真珠湾訪問で支持率は上がるだろう。やるなら1月解散だ」と語ったと伝えている。6日発行の日刊ゲンダイも「安倍首相の訪問決定で急浮上 年明け『真珠湾解散』に現実味」との見出しで観測を報じている。
自民党の二階俊博幹事長は、6日配信の産経新聞電子版によると、こうした見立てについて「解散を考えるのはまだ早すぎる。そういう憶測があるが参考意見だ」と述べたという。ただ一方で「政治をやっている以上は解散を考えるのは当たり前だ」とも述べたという。
(12月8日12時追記)
リード文の「現職首相としては初めてのこと」の部分を削除しました。