大手ゼネコン、鹿島の株価が2016年11月以降急上昇し、20年ぶりの高水準となっている。今秋までは円高傾向が続いたため日本株全体の上値が重く、円高の恩恵を受ける電力や食品などが主に買われた。しかし、米大統領選の結果を受けた「トランプ相場」到来で円安に傾き、潮目が変わった。
大手ゼネコン各社はもともと、国内大都市圏の再開発をはじめとする旺盛な建設需要に支えられて業績は好調。東京五輪の競技会場問題も、一応の決着をみたことで安心感が市場に広がってゼネコン株に資金が流入、代表格である鹿島の高値が目立っている。
首都圏や中京圏などで大型の再開発工事が相次ぐ
ゼネコン各社の業績は、かなり良い。大手4社の2016年3月期決算はそろって純利益が過去最高を更新した。特に鹿島と大成建設は、バブル経済の恩恵がほぼ終了する1992年3月期以来24年ぶりとなる久しぶりの最高益をたたき出した。首都圏や中京圏などで大型の再開発工事が相次いでおり、「もはやゼネコン側が案件を選べる状態になっている」(大手ゼネコン幹部)ということが背景にある。労務費の上昇が一服し、原油安などの影響で資材価格が下落していることも利益の押し上げに貢献した。
2017年3月期も、引き続き好調さを持続している。文字通りの「中間報告」となる16年9月中間決算は、4社とも純利益が過去最高を更新。各社とも受注は量を追わず、利益を重視していることが功を奏している。17年3月期の業績予想も、大成建設を除く3社の純利益が最高更新する見込みだ。
ただ、株価に限れば、16年秋のゼネコン株は今一つさえなかった。鹿島株の動きをみても、8月までは15年の最高値を超える700円台後半を付けることもあったが、9月以降は600円台に低迷することが多くなった。日本株全体が調整局面に入っていたこともあるが、東京五輪や都心部再開発に向けた大型案件の受注が17年にピークを迎え、「五輪後」の成長の姿が見えにくいことや、労務費再上昇への警戒感などから利益を確定する売り注文が膨らんでいたようだ。
トランプ勝利と五輪会場問題
そんななかで株式市場の様子を変えたのは、言うまでもなく11月の米大統領選でのトランプ氏の勝利だ。「大減税」などの公約を好感した世界の株式市場は、リスクを取る雰囲気にあふれてマネーが流入。日本株も総じて上昇し、ゼネコン株にも見直し買いが入った。さらに11月末になって、ゼネコン株の大きな懸念材料だった小池百合子・東京都知事による五輪会場の見直し問題がほぼ決着。未決着のバレー会場を除くと、経費削減に努めるものの、基本的には従来案を踏襲する形となったことでゼネコン株が大商いとなった。鹿島は3会場のメインプレーヤーではないが、大商いの恩恵も受けて12月1日の取引時間中に815円と1997年1月以来、約20年ぶりの高値をつけた。
その後も鹿島株の勢いは持続しているが、「五輪後どうする」という問題自体は解決していない。株価の一段の上昇には、そうした課題に各社が答えを出したり、配当を増やしたりするなどの株主還元策をとることが必要となりそうだ。