岩波書店が発行する「岩波文庫」の一部タイトルをめぐり、図書の識別番号「ISBNコード」に重複があることがインターネット上で問題視されている。
岩波文庫では2013年頃まで、同一タイトルの本は、基本的にISBNコードを引き継いで使用していた。そのため、翻訳者が違う「新訳版」と「旧訳版」が同じコードで扱われる場合があり、ネット上には「購入トラブル」を報告する投稿も出ている。
「訳者が違うなら別の本じゃん」
岩波文庫の「ISBN重複」問題が注目を集めたのは、2016年11月23日に寄せられた「トラブル報告」ツイートがきっかけだ。あるツイッターユーザーが、岩波文庫の『ドン・キホーテ』(セルバンテス著)の新訳版を、古書の販売サイトで購入したところ、注文した商品とは違う「旧訳版」が届いたと訴えたのだ。
こうした購入トラブルを引き起こす原因となったのが、ISBNコードの「重複」だ。
実は、書籍情報の管理にISBNコードを利用している通販サイトでは、同じコードの書籍はすべて「同一の商品」として扱われる。今回の『ドン・キホーテ』のケースでも、投稿者は、
「新訳の商品項目で旧訳が売られているという摩訶不思議」
とツイートで指摘。その上で、「ISBN上書きは常識的にはありえない事態」といった不満も漏らしていた。
このトラブル報告をきっかけに、ツイッターやネット掲示板では、
「コードから本を特定できないの、普通に考えて異常事態じゃないの」
「訳者が違うなら別の本じゃん 絶版になったってあるとこにはあるんだし」
「ISBNってユニークナンバーじゃないんだ。使い回されてるんだ。もう何を頼りにしたもんだか...」
といった投稿が相次いで出ることになった。
2013年まで続いたコードの重複
同じISBNコードに「新訳版」と「旧訳版」が混在している岩波文庫のタイトルは、『ドン・キホーテ』だけではなく、カフカの『変身』やシェイクスピアの『リア王』など様々。実際、過去にも「新訳版をネットで注文したら旧訳版が届いた」といったトラブル報告は、ブログなどにも複数出ている。
ただ、岩波文庫が改版時にISBNコードを引き継いでいたのは2013年頃まで。それ以降に発売された新刊では「コード重複」はないため、今回のような購入トラブルが起きるのは古書の取引が中心だ。実際、ツイッターには、
「岩波は再販してないから古い版がなくなったから訳を変えた新しい版作ってるだけだと思う」
「出版社は古書店の都合までは考えてられないでしょう。新刊専門なので」
といった投稿も出ている。
なお、ISBNコードを発行する「図書コード管理センター」の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、
「ISBNコードの表示は出版業界の自主的な取り組みです。本の内容が異なる場合は別のコード付けるようにルールを設けてはいますが、強制力はありません。どのように運用するかは、個々の出版社が決めることですから」
と話している。