東京大学本郷キャンパス(文京区)にある総合図書館本館の耐震改修工事をめぐり、一部の学生や教員が反発を強めている。工事の影響で2017年4月から1年間、書架や資料閲覧スペースなど施設の大部分に立ち入りできなくなるためだ。
大学側は図書・雑誌の貸出継続を含む「代替サービス」を検討するとしているが、学生側は「明らかな権利侵害」だと強く反対する。こうした「対立」が激化したのは、総合図書館が作成した「内部資料」がインターネット上に流出したことが原因だ。
「学生へのサービスを低下させるもので、明らかな権利侵害」
東大の総合図書館は約125万冊の蔵書数を誇り、同学が運営する38の図書施設の中でも中心的な存在だ。現在使われている建物は1928年に完成したもので、改修工事自体は2014年から段階的に行われていた。そのため、工事の影響で施設への立ち入りや資料の利用が一部制限されることは過去にもあった。
こうした状況の中、事態が大きく動いたのは16年11月22日。総合図書館内に、もともと段階的に行われる予定だった改修工事のスケジュール変更を伝える告知文が掲示された。告知文の中では、17年度には工事が重なるため、
「本館の施設としての利用が一部を除き困難であると判断せざるを得ません」
とも書かれていた。
いきなり通知された図書館の「利用制限」を受け、一部の学生が『東大図書館の閉館に反対する学生の会』を結成。翌23日にはツイッターアカウントを立ち上げ、
「このような不利益な変更は、学生へのサービスを低下させるもので、明らかな権利侵害です」
などとした文章を公表。その上で、利用制限の撤回に向けた抗議活動を行うとも予告していた。
数年かけて順次実施の予定だったが...
さらに、「学生の会」が25日に図書館側の「内部資料」をツイッターで公開したことで、学生側の反発がさらに強まることになった。「改修工事期間中の総合図書館サービスについて(案)」と題した資料では、工事のスケジュールが変更された理由について、
「数年をかけて順次実施する予定であった(略)工事が、補正予算の措置等により平成29年度内に同時進行する見通しとなった」
と説明されている。
さらに、公開された別の内部資料では、工事による蔵書の利用制限期間の予定が明らかに。それによると、約16万冊ある開架蔵書は17年度の1年間、約70万冊ある閉架書庫は17年10月から18年3月まで、それぞれ利用できなくなるという。
このように、図書館の利用制限に関する情報が公表されるにつれ、学生間での反発は強まっていった。ネット上には、東大生とみられるユーザーから、
「信じられない」
「こうした独断は恥ずかしい」
「利用者の声を聞かずに進めることに強い失望感」
などの反対意見が相次ぐことになった。同会が11月25日から始めたオンライン署名にも、開始から3日と経たずに1500筆以上が集まった。
図書館側「学習や研究に支障をきたさないことを最優先」
このように一部の学生や教員間で反対の動きが高まっていることを受け、総合図書館は16年11月30日に、
「本館が完全に閉館して全てのサービスが停止するかのような誤解を利用者の皆様に与えてしまったことを、深くお詫び申し上げます」
としたお詫び文を公式サイト上に発表した。その上で、学生や教員の「学習や研究に支障をきたさないことを最優先」にするとして、資料の貸出や学習スペースの確保に努めるとした。
東大広報課は30日のJ-CASTニュースの取材に対し、ネット上に流出した2つの資料について、「総合図書館が作成した会議資料で、議論のためのたたき台としたもの」と説明。その上で、
「工事期間中は、臨時窓口において、貸出申し込みのあった所蔵資料を、1日~2日程度で臨時の保存スペースから取り出して学内配送により総合図書館に送り、届いた資料を貸し出しする予定です」
と具体的な代替案についても言及した。