「ヨダレの多い赤ちゃんは良く育つ」理由
よくかむことの健康効果は肥満防止だけにとどまらない。元日本咀嚼学会理事長の斎藤滋医師は、歯科健康ウェブサイト「噛む健康学」の中で、よくかむことによって出る唾液こそ「不老長寿の妙薬!」として次のように強調する(要約抜粋)。
「『ヨダレの多い赤ちゃんは良く育つ』と言われますが、唾液の中には体を活性化するホルモンのEGF(上皮成長因子)がたくさん含まれています。皮膚を若々しくし、血管・粘膜・臓器などあらゆる細胞の増殖に関係しています。年をとったら柔らかいおかゆでいいというのではなく、年をとればとるほどよくかんで唾液を出さなくてはいけません」
「私は人間にガムをかませて記憶力を調べる研究を行ないました。MRI(磁気共鳴機能画像)で、かむと脳が活性化することを確認しました。ガムを2分間かんだだけで、記憶力のテストが10ポイント向上したのです」
「大リーグの選手がガムをかみながらプレーすることは理にかなっています。緊張がやわらぐばかりか、よくかむことによって背筋力が1~2割アップし、試合中の運動パフォーマンスが向上する研究もあるからです」
日本咀嚼学会のウェブサイトによると、硬い玄米を食べていた弥生時代の人間に比べ、現代人はかむ回数が6分の1以下に減った。時代ごとの1日にかむ平均回数は、弥生時代3990回、鎌倉時代2645回、江戸時代1465回、現代620回だという。そこで、同学会は「卑弥呼(ひみこ)の歯(は)がいーぜ」をキャッチコピーに、「かむ健康効果」を次のように訴えている。
『ひ』=肥満防止。よくかんでゆっくり食べることで脳が満腹感を感じ、食べ過ぎを防ぐことができる。
『み』=味覚の発達。よくかむことで食べ物本来のおいしさを感じることができ、味覚が発達する。
『こ』=言葉の発達。かむことにより顔の筋肉が発達すると、言葉を正しく発音できるようになり、顔の表情も豊かになる。
『の』=脳の発達。かむことでコメカミ付近がよく動き、脳への血流が良くなり、脳の活性化に役立つ。
『は』=歯の病気予防。かむことで歯の表面が磨かれ、唾液もよく出るようになり、虫歯や歯周病の予防につながる。
『が』=がんの予防。唾液の成分である「ペルオキシダーゼ」には、食品中の発がん性を抑える働きがあると言われている。
『い』=胃腸の働きを促進。食品をかみ砕いてから飲み込むことで胃腸への負担が軽くなり、胃腸の働きを正常に保ってくれる。
『ぜ』=全身の体力向上。しっかりかむことで歯やあごが鍛えられ、歯を食いしばったり、全身に力を入れたりできるようになる。