「よくかんで食べなさい!」と親から叱られた思い出のある人は多いだろう。かまないとダメなことはみなわかっているが、忙しい現代、つい早食い・ドカ食いになりがちだ。
よくかまないと、消化不良を起こしたり、肥満になったりするばかりか、メタボリック症候群になるという研究が最近発表された。改めて、よくかむことの重要性をかみしめたい。
よくかまないとメタボになることが判明
この研究をまとめたのは、新潟大学大学院医歯学総合研究科の小野高裕教授らのチームだ。国際歯学専門誌「Journal of Dentistry」(電子版)の2016年10月25日号に発表した。
新潟大学の発表資料によると、研究チームは50~70代の男女1780人を対象に、健康診断と歯科検診を行ない、かむ能力とメタボリック症候群との関連を調べた。かむ能力は、果汁などをゼラチンで固めた菓子のグミを用いて、それぞれ30回かんでもらい、グミがどれだけ細かくなり、表面積が増えたかを指標に測定した。そして、かむ能力を4段階で評価し、健康診断で明らかになったメタボになるリスクとの関係を調べた。
その結果、かむ能力が下から2番目の「あまりかめなかった人」は、かむ能力が最も高い「よくかめた人」に比べ、メタボになる割合が1.46倍高かった。一方、かむ能力が最も低い「ほとんどかめなかった人」は、最も高い人に比べ1.21倍と、メタボになる人が意外に少なかった。これは、本人がかめないことを自覚し、食生活に一定の配慮をしているためとみられる。
かむ能力とメタボの関係は、70歳代だけの調査を見ると、いっそう明確になった。ここでも下から2番目の人が一番メタボになりやすく、最もかむ能力が高い人に比べ、1.90倍になった。研究チームは、発表資料の中で「かむ能力が衰えるとメタボになる関係は、かむ能力が下がりきる直前の集団でみられます。下から2番目の人のように、よくかめていないことを自覚していない人が、偏った食生活になりがちで、一番あぶないのです」とコメントしている。