ストレスを蓄積しないための絶対条件は?
同時に、ストレスをためる原因になる「NG習慣」を見直すことも大事だ。
「仕事とプライベートのオン・オフの切り替えができず、延々と緊張状態が続くのは問題です。寝る直前までスマートフォンやゲームを続けたり、SNSやテレビ電話で他者とコミュニケーションを続けたりするのも緊張状態を続けることになるので注意が必要です」
と奥田氏は話す。
膨大な仕事量や長時間労働、上司や顧客からの強いプレッシャー、人間関係のトラブルなど過度な緊張状態が長期間続く場合は、特に注意だ。
奥田氏は、「緊張状態が続く場合は、とにかくリラックス時間を意識して増やすことが必要です。もちろん法律で定められた週1日の休日を確保することは必須ですが、どんなに忙しくても自分で『ノー残業デー』を決めて、平日も最低1日は早く帰ってリラックスタイムを作っていただくことを強くおすすめします」と助言した。家族とのんびり団らんしたり、一人でゆったりとマッサージやアロマオイル、ゆっくりと入浴して体を温めたりするのも良いリラクゼーションになるという。
自分なりのストレス解消法を探しておくのも大事だ。ウォーキングやストレッチといった軽めの有酸素運動から、好きな音楽・映画鑑賞、カラオケやピクニック、家族や友人とのおしゃべりまで、自分がやりたいと思えることで、体に極度の負担をかけなければ基本的には問題ない。ストレス解消といっても避けるべきなのは、ヤケ酒や暴食、ゲームや夜遊びでの夜更かし、過剰な喫煙、激しい運動だ。「その時は気持ち良いかもしれませんが、結局体の疲労を増長させることになり、後々体の不調につながってきます」と奥田氏は指摘する、さらに、ストレスを蓄積しないためのポイントを説明した。
「絶対条件は睡眠と食事です。最低でも連続6時間以上の眠りと、タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく1日最低2食は取るよう、心掛けてほしいです。これらができなければ、どんなストレス解消法も無意味になります。脳も自律神経も体の一部ですから、睡眠で休息をとり食事で栄養補給してあげないと正常に働くことができません」
症状が軽ければ、薬局で薬を購入して上手に活用するのも手だ。漢方の中では「抑肝散(よくかんさん)」がストレスを原因とする症状に効くとされている。ひどくなったらくれぐれも無理せず、心療内科や精神科にかかるようにしたい。
奥田弘美(おくだ・ひろみ)氏 プロフィル
精神科医、産業医。1992年、山口大学医学部卒業。
精神科医として臨床に携わるほか、産業医として、18か所の企業でビジネスパーソンの心身のケアに関わり、多様な症例と向き合う。豊富な医療知識と経験を生かし執筆活動も精力的に行っている。
近著は「ストレス・疲れがみるみる消える! 1分間 どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)。その他、「一流の人は、なぜ眠りが深いのか?」(三笠書房)、「図解『めんどくさい』をスッキリ消す技術 仕事、家事、人間関係がすべて楽になる!」(マキノ出版)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など著書多数。