覚せい剤取締法違反(使用)で逮捕されたASKA容疑者(58)。その逮捕される約3時間前の映像がテレビ放送されたため、ネット上ではテレビ局各局とタクシー会社に対する激しい批判が起きている。
というのも、その映像はタクシーのドライブレコーダーに記録されていたものだったからだ。タクシー会社が提供したものだと見られ、個人情報保護法違反でテレビ局、及びタクシー会社に何らかの処分が下される可能性もあるとの指摘も出ている。2016年11月30日夕には、タクシー無線グループのチェッカーキャブが、この「事件」を起こしたのは加盟会社だとして、公式HP上に謝罪文を掲載した。
業界団体「常識的に考えられない行為」
問題の映像は2016年11月29日から30日にかけ、各局のニュースや情報番組で流れた。ASKA容疑者は28日の午後9時過ぎに逮捕されたが、その映像は午後6時半頃のもので、自宅に向かう車内で、
「ロケやってて家の前にいっぱい人が集まっていると思うんですけど、ギリギリに停めてください。で、速やかに停めてドアを開けてください。お釣りはもういりませんから」
と、運転手に話す様子が映っている。それを各局は「逮捕直前の車内映像を入手」として報じた。ネット上ではドライブレコーダーの映像が公開されたことに驚きが広がり、
「逮捕前の一乗客の映像を垂れ流すタクシー会社とマスゴミ!どちらもクズだわな笑」
「犯行現場を警察に提出ってんならまだしも 、普通に乗ってる所を民間業者に譲渡(販売?)とか怖すぎるわ」
「芸能人はこれからタクシーに乗るのが怖いだろうな 」
などといった書き込みが掲示板に出て激しい批判が起きた。
J-CASTニュースが業界団体の東京ハイヤー・タクシー協会にドライブレコーダーの扱いについて30日昼に話を聞いてみると、警察関係の捜査依頼があった時など情報提供する場合がなくはないが、
「常識的に考えられない行為です」
とし、業界の信頼低下を憂いていた。
また、リンク法律事務所の紀藤正樹弁護士はJ-CASTニュースの取材に対し、ドライブレコーダーは犯罪防止と運転手とのトラブルがあった場合それを確認し対処する、お客のためのものでもあるとし、それを勝手に流出する行為は個人情報保護法に抵触する、と断定した。こうした場合は行政処分として業務停止処分もあり得るという。
報道の自由をかざしても「公益性」があるとは言い難い
テレビ放送についても、例えばコンビニで暴行や万引き行為といった犯罪そのものの映像は別だが、今回の場合はそうしたものではない。紀藤弁護士は、報道の自由や国民の知る権利をかざしても、「公益性」があるとは言い難いとし、
「ASKA容疑者がBPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てをすれば、審査入りはあり得ます」
と指摘した。
30日夕になってタクシー無線グループのチェッカーキャブは公式HP上に、問題を起こしたのは加盟会社の一つだとし、謝罪文を公開した。記録映像は運行管理統括部長などの管理者が厳重に管理することを徹底させてきたが、それが守れなかった。
「放送された映像の関係者の皆様におかれましては、大変なご迷惑とご心配をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。また、平素よりチェッカーグループをご利用いただいております皆様におかれましても、多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを重ねてお詫びいたします」
と同社の安田敏明社長名で書かれている。