従来型の常識を打ち破っての受賞
ただ気になったのは先週25日に発表されたベストナインで、大谷はパの投手と指名打者(DH)の両部門で選出されたことである。
このタイトルは年間を通じてもっとも優れた成績を残したことがポイントで、優勝貢献を最大ポイントとするMVPと違う点である。つまり規定投球回数、規定打席数をクリアすることは絶対条件だった。それにタイトルが絡む。
今季の投手タイトルは最多勝は15勝の和田毅(ソフトバンク)、防御率1位は2.16の石川歩(ロッテ)、勝率1位は800の千賀滉大(ソフトバンク)、奪三振1位は216の則本昆大(楽天)。
打撃部門では首位打者が3割3分9厘の角中勝也(ロッテ)、本塁打王は39本のブランドン・レアード(日本ハム)、打点は110の中田翔(日本ハム)。
大谷は両方とも及ばない。投手成績に打撃成績、その逆も影響してはならないのがベストナインとMVPのさらに大きな違いでもある。
「受賞は思ってもいなかった。規定(投球回、打席数)に達していませんでしたから」
大谷はベストナインの結果を聞いてそうコメントした。選手は試合出場を最大の目標としているからである。次に投手ならイニング数、打者なら打席数を目指す。だから談話はそれが前提にあったことを示している。
それでも大谷が史上初の2部門選出をやってのけた。好成績を残した選手は大谷フィーバーに圧倒されたことになる。大谷は二刀流の論議を実力で封じたわけで、プロ野球に新しい時代の到来といえよう。投票はその現れであって、従来型の常識、つまり評価ポイントが変わったことでもあった。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)