「中絶を考えられている方へ『産んでくれたら最大200万円相当の援助』があります」。大阪市内のNPO法人がホームページ上などで何度もこう呼びかけて、市から7回も行政指導を受ける事態になっている。
一方、NPO法人側は、養子縁組という選択肢を知ってもらうことで、胎児の命を少しでも多く救うことができると主張している。
すでに7回も行政指導
このNPO法人「全国おやこ福祉支援センター」は2014年から、戸籍上も実子扱いになる6歳未満の子供を対象にした特別養子縁組のあっせん事業をしている。
児童福祉法では、養子縁組に当たって出産にかかった費用だけを実親が養親から受け取ることができる。もし実親がお金ほしさにそれ以上を受け取ったら、刑法の人身売買罪に問われることになる。
全国おやこ福祉支援センターでは、2015年から「最大200万円相当の援助」をうたっており、大阪市のこども家庭課によると、市は「人身売買の誤解を招く」として15年6月から16年4月まで計7回も行政指導してきた。
ところが、支援センターは10月に会員制サイト「赤ちゃんマッチング コウノトリ」を開設して、同じ文言を載せるなど市の指導に従わない姿勢をみせている。そして、11月21日には、NHKの報道番組「クローズアップ現代+」もこの騒ぎを取り上げるほどになった。
その後、共同通信が28日付記事で、大阪市が支援センターに対し、近く8回目の行政指導を行うと報じた。
なぜ市の指導に従わないかについて、支援センターでは、15年11月14日にホームページ上で載せた記事で説明している。
それによると、「最大200万円」と表現したのは、実親の中には、帝王切開で健康保険が使えずに90万円ほどの医療費がかかり、そのほか生活費や交通・通信費などで計120万円かかったケースがあり、さらに子供の障害などで特別処置が必要なら数十万円を上乗せする可能性があるためだという。
団体側「現金がもらえると来れば、助かる命がある」
「中絶を考えられている方」に呼びかけたのは、経済的な理由などで中絶する女性が多くなっており、養子縁組という選択肢を知ってもらうことで胎児の命を1人でも多く救うことができるからだとしている。
また、赤ちゃんを産むことを選択した場合でも、乳児院のような施設よりも養親のいる家庭の方が赤ちゃんには望ましいことを挙げる。行政の児童相談所が養子縁組を行う数は限られているが、晩婚化などから子供に恵まれず養親になりたい人が増えており、実親に養子縁組を選んでもらいたかったとしている。
全国おやこ福祉支援センターの阪口源太代表は11月29日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように話した。
「2週間に1人の割合で、赤ちゃんの遺棄事件が起きています。人身売買が行われるわけではありませんが、現金がもらえると思って相談に来てもらえれば、助かる命があります。最大200万円の文言のおかげで、実際多くの人から問い合わせを受けているんですよ」
一方、大阪市のこども家庭課では、支援センターへの行政指導を行う方針に変わりはないと取材に答えた。
「養親が出産にかかった費用を100~150万円負担するケースも確かにあり、文言が直ちに違法になるわけではありません。しかし、キャッチコピー風に書かれ、実親が現金をもらえるかのような表現になっており、やはり誤解を招く恐れがあります」
支援センターでは、「最大120万円相当の援助実績有り」の表現を打診したというが、こども家庭課では、「費用はそのときで違いますので、金額を明示することはおかしい。お金をもらえると勘違いされる恐れがあります」とその表現でもダメだとしている。