トヨタ自動車が2016年12月1日に電気自動車(EV)開発に向けて社内ベンチャーを発足させることになった。EV開発を本格化させ、各国で急速に進む環境規制の強化に対応する。
社内ベンチャーの名称は「EV事業企画室」。トヨタとグループの豊田自動織機、アイシン精機、デンソーの4社から1人ずつの計4人が参加し、EV事業戦略の立案や製品企画を担当する。東京五輪が開催される2020年までの量産体制の確立と事業化を目指す。
燃料電池車を次世代エコカーの中核に据えてきたが...
EV事業企画室は分野別に分かれた社内カンパニーといった既存の組織からは独立していて、まずは4人でスタートして必要に応じて体制を拡充する。トヨタは「小さな組織で従来とは全く異なる仕事の進め方をすることによって、プロジェクトのスピードアップを図り、商品の早期投入を目指す」としている。
これまでトヨタは、水素を燃料として走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない燃料電池車(FCV)を「究極のエコカー」と位置づけ、次世代エコカーの中核に据えてきた。走行距離や水素の充てん時間などの面でガソリン車に近いからで、日産自動車などが開発に力を入れているEVからは距離を置いてきた。
しかし、国や地域ごとに「エネルギー課題やインフラ整備状況が異なる」(トヨタ)ため、さまざまな課題に対応する必要性に迫られるようになってきた。
ハイブリッド車がエコカーから外れる可能性も
さらに各国が環境規制を強化する中、主力のハイブリッド車(HV)がエコカーから外れる可能性もある。特に世界最大の自動車市場へと成長した中国は環境問題が深刻で、EV普及に力を入れている。欧米でも規制が厳しくなるため、トヨタは「多用なインフラに対応する品ぞろえが必要になっている」として、EV開発に舵を切ったというわけだ。
独フォルクスワーゲン(VW)がEV開発を加速させる意向を示すなど世界中の自動車メーカーが開発に取り組んでいる。また、電池の改良などで走行距離を伸ばしており、課題を克服しつつある。
こうした状況を受け、トヨタは社内ベンチャーの立ち上げに至ったが、豊田章男社長は「その分野のことだけを専門に考え、スピード感のある仕事の進め方を確立することで、トヨタやトヨタグループの仕事の進め方改革をけん引してほしい」と話しており、出遅れたEV開発での巻き返しを狙う。