焼き鳥は串から外さないで、「絶対に美味しくない」から――。東京・田町にある鳥料理専門居酒屋「鳥一代」本店に掲示されたこんなメッセージが、インターネット上で波紋を広げている。
焼き鳥の串から肉を外して食べる客への苦言を連ねたように受け取れる文章に、ネット上では「どう食べようが客の自由だろ!」との反発が広がっている。J-CASTニュースは、メッセージを書いた本人にその意図を聞いた。
串から外したら「焼き鳥ではございません」
いまネット上で物議を醸している文章は、「鳥一代」代表取締役社長の山﨑一彦さん(46)が2016年11月25日、本店の店先にあるホワイトボードに寄せたもの。『焼き鳥屋からの切なる願い』と題して、焼き鳥は串から外さずに食べて欲しいと訴える内容だ。
「こんなこと言える立場では...」との前置きから始まる文章では、焼き鳥の串から肉を外して食べる客が増えたことについて「凄く悲しい」と一言。その上で、
「僕ら、一生懸命一本一本指しているんです!!一本一本、丁寧に焼き上げているんです。これでは切った肉をフライパンで焼いても同じ。焼き鳥ではございません。絶対に美味しくないし!!」
と率直な思いを明かしている。
このメッセージは、あるツイッターユーザーが26日にボードの文面を撮影した画像を投稿したことで大きな注目を集めることになった。ツイッターやネット掲示板には、
「焼き鳥に関してはうるせえ客の自由だろって思ってしまうなあ」
「別にどっちでもいいと思うけど、作り手の自己満足を強制される店には行きたくないって思う」
「色んな種類を食べたいけど1串ずつ食べてたらお腹にもお金にも無理って場合もある」
などと店の意見に反論する投稿が相次いでいる。
一方で、「焼き鳥屋に行ったのなら串から食え!と思う」「串から外す工程で冷めるし間違いなく多少味落ちる」と店の意見に賛同する声も出ている。
社長「賛否両論が出るのは予想していました」
いったいなぜ、こうした物議を醸すメッセージをわざわざ店先で掲示したのか。鳥一代の山﨑社長は28日のJ-CASTニュースの取材に対し、「賛否両論が出るのは予想していました」と話す。その上で、
「店としては、焼き鳥を一本そのまま召し上がってもらうことを前提に焼いています。作り手が一本の串に込めた工夫や思いが、皆さんに少しでも伝わればという思いで文章を書きました」
と説明する。
実際、同店では一口目にあたる串先には大き目の肉を刺したり、一本の串の中でも振る塩の量に変化をつけているなど工夫を凝らしている。その上で、焼き鳥の串を刺すのは「素人では無理」として、肉に切り込みを入れるといった仕込みも含めると2年ほどの修行期間が必要とも説明していた。
山﨑社長は続けて、「焼き鳥の文化ってどうしてこうなってしまったのか、というやりきれない思いがあったことも確かです」とも語る。実際、串を外す客への率直な思いをつづったメッセージには、同業者から賛同の声が数多く寄せられているという。
なお、物議を醸したボードのメッセージは26日に消し、28日からは「たくさんのご意見、コメントありがとうございました」などとした文章に変えたという。取材の終わり、山崎社長は
「実際、お客様にはどんな風に焼き鳥を食べて貰ってもいいんです。ただ、作り手が裏で何を考え、どんな工夫をしているか、頭の片隅にでも入れて頂ければ本当にうれしいです」
と話していた。