失恋の痛みほどつらいものはない。「時間が解決してくれるよ」と慰められても、なかなか相手を忘れることができない。
なぜ、これほどつらいのか。実は、失恋は心だけでなく、体まで傷ついたのと同じ痛みをともなうことが研究で明らかにされた。
脳は失恋の痛みを体の痛みを同じに受け取る
この研究をまとめたのは米ミシガン大学とコロンビア大学の合同チームだ。科学誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)の2011年3月28日号に発表した。論文を紹介した「ナショナル・ジオグラフィック」(2011年3月29日付)によると、研究チームは、フェイスブックや地域情報サイトの広告を通じ、過去6か月以内に「恋愛の不幸な結末」(失恋や破局など)を経験した男女を募集した。女性21人、男性19人の合計40人が研究に協力してくれた。
研究チームは協力者たちに次の2つの実験を行ない、それぞれfMRI(機能的核磁気共鳴断層画像法)を装着し、脳のどの部分が反応するか調べた。
(1)熱を発する装置を左腕に取り付け、熱いコーヒーカップが直接肌に触れたような「痛さ」を与えた。ただし、あまり痛くない程度に。
(2)振られた相手の写真を眺めながら、その人と分かち合った楽しい出来事や失恋した当時のことを思い出してもらった。
すると、2つの実験とも脳のまったく同じ部分の活動が活発化した。「二次体性感覚皮質」と「背側後部島皮質」だ。どちらも傷を負ったり、内臓に疾患ができたりして肉体的な痛みを感じると、血流が盛んになり反応する領域だ。
この実験のほか、協力者にはfMRIを装着しながら様々な映像を見せ、「恐怖」「不安」「怒り」「悲しみ」などマイナスの感情を引き起こさせる実験を計150回行なった。しかし、肉体的な痛みを感じる2つの領域は活発化しなかった。様々な精神的な苦痛の中でも、「失恋」だけが体と同じ痛みを感じるのだ。
アスピリンで恋の痛手が治るかも
この結果について、ミシガン大学のイーサン・クロス博士は、科学ニュースサイト「Science Daily」(2011年3月30日付)の取材に「私たちはナイフで傷つけられた時も、恋の相手から拒絶され心に傷を負った時も、『痛い!(Pain!)』と表現します。これは世界共通の文化です。実際に体が傷ついたわけではないですが、脳がそう認識するからです。この分野の研究はまだ始まったばかりで、脳内では肉体的苦痛と精神的苦痛がリンクしている可能性が高いと思われます」と語っている。
簡単に言うと、脳は失恋の痛みを体の痛みと同じように受け取っているというわけだ。体の痛みは鎮痛剤で治まる場合が多い。恋の痛手も、アスピリンやロキソニンを飲むと早く立ち直ることができるかも?