終身雇用と年功序列との関係
政府も副業推進に動き出したが、その狙いは、人口減少で労働力不足が深刻化しつつある中、個々の働き手の労働生産性を上げることが効果をもつと判断しているためだ。加藤勝信・働き方改革相は記者会見で、「社員が成長し、新たな事業や技術革新にチャレンジするのは、企業にとってもプラスになってくる」と述べ、社員の能力向上が企業の将来にプラスに働くと見ている。
厚生労働省も、企業の参考に示している標準的な就業規則で兼業・副業を禁止しているのを、副業容認の様式に改めることを検討している。
ただ、企業の中には反発も根強いとされる。中小企業庁の委託でリクルートキャリアが行った調査によれば、2014年度に社員の「兼業・副業」を「容認している」と答えた企業は3.8%に過ぎない。副業をすることで、社員が本業をおろそかにしたり、副業をきっかけに優秀な人材が社外を離れたりすることを恐れているためとみられる。
根底には終身雇用と年功序列という日本的な雇用慣行の根強さがある。一生面倒を見てもらう代わりに会社に忠誠をつくすということで、本業の業務以外の仕事に手を出すなどもってのほか、というのは、いわば企業文化としてしみついているケースが多い。政府の後押しがあるとはいえ、経営者、そして従業員自身の意識を変えることは、簡単ではなさそうだ。