落語家の桂歌丸さん(80)が自身を「人間国宝」に推薦する署名活動について、複雑な心持ちであることを明かした。
署名活動は、落語家の三遊亭円楽さん(66)が発起人となり2015年10月にスタート。窓口の1つであるインターネット署名サイト「Change.org」上では、すでに6万5000人分が集まっている。
「何かもらうと、何か言う人がいる」
2016年11月23日放送の「徹子の部屋」(テレビ朝日系)では、司会の黒柳徹子さん(83)がゲストの歌丸さんにこの話題を振った。黒柳さん自身署名に参加しており、番組では実際に円楽さんに手渡した用紙も披露した。
歌丸さんはこれに笑みを見せたが、署名活動に対してはあまり快く思っていないようで、実は「余計なことすんな」と断ったという。黒柳さんが訳を聞くと、
「だって、んなもん、人が推薦してやるもんじゃないですよ。あれはお上が推薦してやるもんですもん」
と説明。さらに、
「何かもらうと、何か言う人がいるわけですよ。例えば『あれで人間国宝か』とか『あんな噺で人間国宝か』って言う人がいるわけです」
ともこぼし、「大役なんか仰せつかんないで、普通にやってる方が私は気が楽」と語った。
これを聞いた黒柳さんは、仮に歌丸さんが人間国宝に認定されても、それは署名が理由ではないと指摘。あくまで自身の「芸」のためだと考えるよう提案したが、歌丸さんは「いやいやいや」と首を振りながら、「黒柳さんや何かのせいですよ、それは」と謙遜した。
円楽「我々の業界の見本」と熱弁
ただ円楽さんは、そんな歌丸さんの気持ちも分かった上で署名活動を続けているようだ。16年1月に「徹子の部屋」に出演した際には「当人は欲のない人なんですよ」としつつ、その上で
「落語界の先頭で、『笑点』50年背負って、最後の生き残りで。未だに日本全国走り回って、後進の指導もして。体悪いのにやっぱり聞きたい人がいると行くんです。我々の業界の見本といったら俺は歌丸師匠だと思う。最後の恩返しと思って、歌丸師匠を人間国宝もしくは文化功労者にしたい」
と熱く語っていた。
人間国宝は、文化財保護法上「国が全国的な観点から調査して認定することとしており、申請制度や推薦制度は採っていない」(文化庁資料より)が、それでも賛同する人は多い。
「Change.org」上では10万筆を目指し、現在も署名活動が行われている。11月25日時点では約6万5500筆が集まっている。また、円楽さんの所属事務所サイト内に設けられた「桂歌丸を人間国宝にする会」特設ページでは署名用紙データを配布している。