10年で730万人増えた高齢ドライバー
警察庁の交通事故統計で、死亡事故の原因を年齢別にみると、「65歳以上」のドライバーの場合、ぼうっとしていたり、注意が散漫になっていたりする「漫然運転」の状況が142件、アクセルとブレーキのペダルの踏み間違いなどの「運転操作不適」が140件と、他の年齢層に比べてダントツに多い。
睡眠不足や疲労など身体の調子が悪かったり、集中力がなかったり、誤った思い込みや思い違いによる誤操作で急発進したりするケースが少なくないことがわかる。認知症が疑われるケースもあった。
それも、ふだん走り慣れた道路での死亡事故が多いことがうかがえる。生活圏の中の事故だけに、死亡事故につながりやすいこともあるようだ。
一方、「16~24歳」で最も多かった事故原因は、「最高速度違反」の52件だった。わき見運転や前方不注意などもある。
これまでは、一般に運転免許を取りたての若者ほど、運転になれていないため事故を起こしやすいと考えられてきた。それは損害保険の自動車保険にも表れていて、一般に保険料は年齢が若いほど高く、運転履歴が長くなり、事故がなければ保険料は下がっていく。しかし、最近は高齢者の交通事故が増えているため、たとえば35歳以上の年齢条件であれば、運転者の年齢が高齢者になれば保険料が高くなるように設定されている。
ただ、警察庁の交通事故統計を「運転免許を保有する人10万人あたりの死亡事故の件数」でみると、「16~24歳」は5.82件に対し、「65歳以上」は4.58件で、「65歳以上」のドライバーより「16~24歳」のほうが高かった。
しかし、急速な少子高齢化で、いまや日本の総人口の27.3%にあたる3461万人が「65歳以上」だ(総務省の人口推計、9月15日現在)。
警察庁によると、免許を保有している「16~24歳」の若者は573万人で、全体の7.0%にすぎない。その一方で、「65歳以上」のドライバーは、この10年で約730万人増えて、1710万人となった(2015年12月時点)。免許保有者全体の20.8%を占めており、高齢者のドライバーは今後ますます増えることが見込まれる。事故率が多少低くても、高齢者の交通事故が目立つのはこうした背景もある。