「TPPで大騒ぎ」は無意味だった? 「トランプ」でも株価上昇のからくり

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   米国のトランプ次期大統領が、就任初日となる2017年1月20日から100日以内に取り組む政策課題として、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を通告する意向を、16年11月21日に示した。政権移行チームのWEBサイトに掲載した自身の動画メッセージの中で明らかにした。

   「米国第一主義」を掲げ、「次世代の生産や技術革新を米国内で実現し、国内労働者に富と雇用をもたらすことを望む」とも述べたトランプ氏。その手腕への期待から、米ニューヨーク株式市場は翌22日のダウ工業株30種平均が続伸し、前日比67ドル18セント高の1万9023ドル87セントと、初めて節目の1万9000ドルを突破して取引を終えた。

  • 日本株は上昇中、「TPP」騒動はなんだったのか?
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「トランプ相場」に勢い

   とにかく、いまの「トランプ相場」には勢いがある。トランプ次期大統領は11月21日、大統領選のときから公約に掲げていた「TPPからの離脱」を明言した。トランプ氏の「自国の利益を最大限に追求する」姿勢が鮮明に表れた政策で、米国経済にとってはプラスに働くと受け止められている。さらには法人減税などの実施で、より企業活動を活発にする考えも明らかにしており、株式市場にはトランプ大統領の「誕生」を歓迎するムードが広がっている。

   これを受けた22日の米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、初の1万9000円超えの「絶好調」だった。

   一方、米国の「TPP離脱」は、日本にとって打撃だ。株価変動に大きな影響を与える輸出関連株を中心とする日本株の、大きな懸念材料になる。トランプ大統領の「誕生」が決まった11月9日の日経平均株価が前日比919円84銭安の1万6251円54銭まで急落。世界の株式市場のなかでも下げ幅が大きかったのは、日本の輸出関連株への影響が大きいとみられたためかもしれない。

   ところが、急落した株価もその翌10日には急騰して1万7000円台をあっさり回復。一本調子で1万8000円台まで到達した。24日の東京株式市場は、日経平均株価が6日続伸。一時、前営業日の22日と比べて219円78銭高い1万8382円72銭まで上昇した。終値は170円47銭高の1万8333円41銭だった。

   株価上昇の要因は、好調な米株式市場の流れを受けて取引が始まったことに加えて、東京外国為替市場でドル円相場が一時1ドル112円台後半まで円安が進んだことがある。東証1部の売買高は23億6753万株、売買代金は2兆6183億円。業種別でみると、鉄鋼や輸送用機器の上昇が目立ったほか、不動産業やゴム製品も伸びた。

   米国のTPP離脱など、まったく意に介さないような相場となったようだ。

TPP「骨抜き」で日本株は下がる?

   日米など12か国が参加するTPP、環太平洋連携協定とは、参加国の関税を無税にして貿易を活性化することで、参加国の経済成長を促すことが目的。そのため、関税率の低い国ほど有利に働く傾向がある。日本の場合、TPP参加することで、関税率の高めの農作物への影響が大きく、不利。関税率が低めの工業製品には有利とされる。

   つまり、日本は「TPPに参加すると株価が上昇、不参加だと下落」とみられていたわけだ。

   そうしたなか、トランプ次期大統領が「TPP離脱」を明言したことで、事実上TPPが骨抜きになる可能性が高まった。ところが、現状では「下落」とみられていた株価が上昇している。

   株価の動きを、どのようにみればよいのだろう――。

   第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏は「TPPは10年、20年といった長期にわたって効いてくる経済政策ですので、もともと短期的には影響がありません」という。

   もちろん、米国株式市場の「トランプ相場」の勢いが東京株式市場に強く働いていることはあるが、そもそも、民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏もTPPには「反対」だった。「(TPPは)じつはまったくといって(株価とは)関係ないといっていい」と話す。

   とはいえ、日本では「TPPに参加しないと経済がダメになる」といわんばかりの騒動だったはず。藤代氏は、「状況が変わったことがあるかもしれません」と、こう続ける。

「たとえば5年前。当時、韓国では自由貿易を積極的に進めることで輸出シェアを伸ばしていました。その勢いで、日本企業が衰退した。しかし、韓国企業にその勢いはありません。ライバルの脅威がなくなってきたことが背景にあるかもしれません」

   日本では11月10日にTPP承認案が衆院を通過。参加国はそれぞれ、国内の承認手続きを経て、発効を待つまでになっている。

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