話題の劇場版アニメ「この世界の片隅に」の海外上映をサポートするクラウドファンディングについて、一時、監督の片渕須直氏が支援を控えるよう呼びかける異例の事態が起きた。
理由は「資金が集まりすぎた」ためだ。
海外上映国への監督の渡航費支援などを呼びかける
「この世界の片隅に」は、こうの史代さんの同名マンガを原作にしたアニメ映画。第2次世界大戦中の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きる女性・すずの姿を描く。女優ののんさん(23)が主演を務めていることでも注目を集め、2016年11月12日の公開以降、好調に動員を伸ばしている。
パイロットフィルムの制作等にあたっては、クラウドファンディングサイト「Makuake」上で資金調達を行った同作。11月22日には新たなプロジェクトをスタートし、すでに配給が決定している世界15か国(11月時点)に片渕監督が赴くための渡航・滞在費用の支援を呼びかけた。
すると、開始からわずか11時間で目標額である1080万円を達成。その後も着々と支援が集まり続けた。監督もこれには驚いたようで、23日にはツイッターで、
「『この世界の片隅に』現在進行中のクラウドファンディングはすでに目標額を達成しており、これ以上額を積み増しても使途が設定出来ていません。新規のご支援はいったんお控え願えないでしょうか」
とお願いすることに。ファンから「このまま金額が増えると日本に帰ってこれませんね」とのコメントが寄せられると「月へ飛ばされるかも」と冗談交じりに返答した。
支援停止を呼びかけるという異例の事態を受け、ネット上では「支援停止の呼びかけ初めて見た...」「控えてほしいってなかなか聞かないぞ、凄いな」と驚きの声が上がった。
「のんも連れて行ってあげたら」「アニメーターにボーナスを」
同時に、ファンらからは
「のんさんも一緒に外国へ連れて行ってあげたらどうかな」
「アニメーターさんにボーナスとして払ってもいい」
「残った資金で上映館を増やすことはできないでしょうか?」
「海外観客向けに広島県案内図など作成する費用には使えないのでしょうか?」
などと、さまざまな解決策が提案された。
そうした中、プロジェクトを立ち上げた同作製作委員会は24日、2つの対応策を発表した。
1つは、金額に応じて分かれている各コースの支援者数に上限を設けるというもの。募集自体は予定どおり17年1月30日まで続けるが、それぞれのコースは上限に達した時点で募集終了となる。
もう1つは、実行内容の強化。目標金額を超えた分は「海外渡航報告会イベント」の開催場所・回数を増やしたり、支援者に送るレポートのページ数を増やしたりすることに充てるという。
同プロジェクトは「現地の人々が世界で唯一の被爆国である日本にどんな気持ちを抱くのかを監督が肌で感じ、受け止め、現地の観客と交流し、そこでの体験を日本に持ち帰る」ために行われている。支援額は24日19時点で1840万円を超えており、賛同する人は今後も増えそうだ。